寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
ルチアが浴室に消えると、扉を閉めるふりをして、ベッティは気づかれない程度に隙間を開けたままにした。懐から手鏡を取り出しそれを覗き込む。慎重に角度を変えながら中の様子を伺った。
今回カイに言われたのは、ブルーメ家の令嬢になった少女の世話をしろということだけだ。慣れない貴族社会になじめるように。そんなつまらないことだった。
普段出されるような情報収集の指示もない。ほかの侍女でも務まりそうなことを、わざわざカイは自分に任せてきたのだ。
確かにルチアは異形が視えている様子だが、上手に距離をとっている。守る必要などなさそうなので、何かほかに裏があるのだろうとベッティはそう踏んでいた。
ドレスを脱いだ下着姿のルチアが鏡に映る。子供とも大人とも言えないそんな年頃の体つきだ。その華奢な肢体に刻まれた鮮明なあざを認め、ベッティは知らず息をのんだ。
「あのあざは……」
どう見てもあれは龍のあざだ。ベッティはそれを持つ貴族女性を探すために、長いこと潜入捜査を続けてきた。龍のあざとは何なのか、なぜそれを持つ人間を探すのか。その理由をカイから知らされたことはない。
状況から判断するに、龍から託宣を受けた者の証なのだとベッティは理解している。だがその託宣が何のために龍から与えられるのか、やはりベッティは知らないままだ。
赤毛に金の瞳は、王族を思わせる。初対面から思っていたことだが、ルチアの顔立ちはどことなくピッパ王女に似ていた。導かれる答えは、この少女は「王族の血を引く龍から託宣を受けた者」といったところだろう。
(カイ坊ちゃまがルチア様のもとにわたしをよこしたのは、このせいだったんですねぇ)
あざのある場所が場所だけに、カイがどうやってそれを確かめたのかは問い詰めたいところだが。
どのみちカイがやれと言うのだから、ベッティに否の選択肢はない。自分が従うのは、カイひとりだけなのだから。
ベッティにとってカイが言うことは絶対だ。例え人道に反していようとも、それがカイの望みならベッティは気に留めることもない。
手鏡を懐にしまう。ベッティはそっと扉を閉めた。
今回カイに言われたのは、ブルーメ家の令嬢になった少女の世話をしろということだけだ。慣れない貴族社会になじめるように。そんなつまらないことだった。
普段出されるような情報収集の指示もない。ほかの侍女でも務まりそうなことを、わざわざカイは自分に任せてきたのだ。
確かにルチアは異形が視えている様子だが、上手に距離をとっている。守る必要などなさそうなので、何かほかに裏があるのだろうとベッティはそう踏んでいた。
ドレスを脱いだ下着姿のルチアが鏡に映る。子供とも大人とも言えないそんな年頃の体つきだ。その華奢な肢体に刻まれた鮮明なあざを認め、ベッティは知らず息をのんだ。
「あのあざは……」
どう見てもあれは龍のあざだ。ベッティはそれを持つ貴族女性を探すために、長いこと潜入捜査を続けてきた。龍のあざとは何なのか、なぜそれを持つ人間を探すのか。その理由をカイから知らされたことはない。
状況から判断するに、龍から託宣を受けた者の証なのだとベッティは理解している。だがその託宣が何のために龍から与えられるのか、やはりベッティは知らないままだ。
赤毛に金の瞳は、王族を思わせる。初対面から思っていたことだが、ルチアの顔立ちはどことなくピッパ王女に似ていた。導かれる答えは、この少女は「王族の血を引く龍から託宣を受けた者」といったところだろう。
(カイ坊ちゃまがルチア様のもとにわたしをよこしたのは、このせいだったんですねぇ)
あざのある場所が場所だけに、カイがどうやってそれを確かめたのかは問い詰めたいところだが。
どのみちカイがやれと言うのだから、ベッティに否の選択肢はない。自分が従うのは、カイひとりだけなのだから。
ベッティにとってカイが言うことは絶対だ。例え人道に反していようとも、それがカイの望みならベッティは気に留めることもない。
手鏡を懐にしまう。ベッティはそっと扉を閉めた。