寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
ルチアがやってきてから、リーゼロッテの顔に笑顔が戻っている。ふさぎ込む時間も減って、エラは安堵する日々を送っていた。
その上ルチアは全く手がかからない。今まで自分のことは自分でやって生きてきたのだろう。平民として育ったのだから、何も不思議なことではない。だが貴族としてはそれでいいはずもなかった。
「ルチア様、またご自分で掃除などなさって。そういったことは使用人に任せればいいのです」
「だって、何もすることがなくって。刺繡は指を刺しちゃうし、わたし向いてないんだわ……ですわ」
「誰にでも最初はございます。続けているうちに上達していくものですよ。それにルチア様が掃除をなさっては使用人が困ります」
「え? だって自分が使う部屋よ。自分で掃除したっていいじゃない、ですか」
「担当の使用人の仕事ぶりが気に入らないのだと、その者が解雇されるかもしれません。貴族の言動はそれくらい影響があるのですよ」
エラの忠言にルチアは一瞬絶句した。
「何それ、面倒くさい……。わたし掃除が行き届いてないなんて思ってないし、お願いだからその人をやめさせたりしないで」
「そう思われるなら今後掃除は一切しないことです。必要なら使用人をお呼びください」
「……そうすればその人はちゃんとお給料がもらえるのね?」
エラが頷くとルチアはほっとした顔をした。
きっと今まで苦労して育ってきたのだろう。子供が働かなくてはならない過酷な現実が、この国にはいまだ存在する。エラが育ったダーミッシュ領はそういった子供はほとんどいない。他領ではそうもいかないということを、エラが知ったのは成人してからだ。
「ルチア様は夜会の前に一度ブルーメ家に戻られるのですよね?」
「ええ……」
不安そうなルチアに、エラがしてやれることは何もなかった。
「夜会ではリーゼロッテお嬢様とできるだけ親しくお話なさるといいと思います。お嬢様と懇意にされているというだけで、ルチア様を軽く扱う者はいなくなるでしょうから」
「エラ様は夜会には出ないの?」
「はい、わたしは招かれておりませんから」
ルチアはため息をついて投げやりな様子で言った。
ルチアがやってきてから、リーゼロッテの顔に笑顔が戻っている。ふさぎ込む時間も減って、エラは安堵する日々を送っていた。
その上ルチアは全く手がかからない。今まで自分のことは自分でやって生きてきたのだろう。平民として育ったのだから、何も不思議なことではない。だが貴族としてはそれでいいはずもなかった。
「ルチア様、またご自分で掃除などなさって。そういったことは使用人に任せればいいのです」
「だって、何もすることがなくって。刺繡は指を刺しちゃうし、わたし向いてないんだわ……ですわ」
「誰にでも最初はございます。続けているうちに上達していくものですよ。それにルチア様が掃除をなさっては使用人が困ります」
「え? だって自分が使う部屋よ。自分で掃除したっていいじゃない、ですか」
「担当の使用人の仕事ぶりが気に入らないのだと、その者が解雇されるかもしれません。貴族の言動はそれくらい影響があるのですよ」
エラの忠言にルチアは一瞬絶句した。
「何それ、面倒くさい……。わたし掃除が行き届いてないなんて思ってないし、お願いだからその人をやめさせたりしないで」
「そう思われるなら今後掃除は一切しないことです。必要なら使用人をお呼びください」
「……そうすればその人はちゃんとお給料がもらえるのね?」
エラが頷くとルチアはほっとした顔をした。
きっと今まで苦労して育ってきたのだろう。子供が働かなくてはならない過酷な現実が、この国にはいまだ存在する。エラが育ったダーミッシュ領はそういった子供はほとんどいない。他領ではそうもいかないということを、エラが知ったのは成人してからだ。
「ルチア様は夜会の前に一度ブルーメ家に戻られるのですよね?」
「ええ……」
不安そうなルチアに、エラがしてやれることは何もなかった。
「夜会ではリーゼロッテお嬢様とできるだけ親しくお話なさるといいと思います。お嬢様と懇意にされているというだけで、ルチア様を軽く扱う者はいなくなるでしょうから」
「エラ様は夜会には出ないの?」
「はい、わたしは招かれておりませんから」
ルチアはため息をついて投げやりな様子で言った。