寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「やはりお前がいちばんあれに似ているな」
「そりゃ母子ですから」
「ジルヴェスターは瞳が似ておると思うて産ませたが……カイ、お前の前ではくだらぬ紛い物よ」
顎に手を当て顔を上向かせる。恍惚とした表情のままデルプフェルト侯爵は、さらに頬に指を滑らせた。
「そうだ。この色だ。古から生れ出た琥珀の瞳。燃え尽きた灰の髪……。カイ、なぜお前は髪を伸ばさぬか」
唐突に問うてくる。だがこの質問も毎度のことだった。
「長い髪は任務の邪魔です」
「つまらぬな」
そう言いながらも愛おしそうに黒の瞳を細めてくる。この男にとって子供たちは、飾り置くためのコレクションに過ぎない。気に入った色彩の女を孕ませて、生まれた子供を引き取っては近くに侍らせているというわけだ。
屋敷に住まわせるのは子供たちだけだった。手を出した女たちは住む場所を別に与えて、それぞれきちんと面倒を見ている。それが唯一の救いと言えるだろうか。
この男の瞳には、どのみち狂気が宿っている。理解できるとは思えないし、そうしたいとも到底思えない。歪んだ寵愛を欲する兄弟の多くは、この男にすっかり毒されてしまっている。それが哀れに思えてならなかった。
「先の夜会で女になったであろう? 今宵はあれをせぬか?」
「ご冗談を。任務以外で女装するほど、オレも酔狂ではありませんよ」
「冗談なものか。お前を愛でるのも此れ切りかも知れぬであろう?」
心ない言葉を平然と口にするのは、この男に心がないからだろうと本気で思う。それをものともしないカイ自身も、結局のところ同じ穴の狢だ。
「それにお前は年々男になりよる」
「それはまぁ、男ですから」
「まったくもってつまらぬ」
裏腹に口元に薄く笑みを刷く。常人には感じ得ないうすら寒さがそこにはあった。
「そりゃ母子ですから」
「ジルヴェスターは瞳が似ておると思うて産ませたが……カイ、お前の前ではくだらぬ紛い物よ」
顎に手を当て顔を上向かせる。恍惚とした表情のままデルプフェルト侯爵は、さらに頬に指を滑らせた。
「そうだ。この色だ。古から生れ出た琥珀の瞳。燃え尽きた灰の髪……。カイ、なぜお前は髪を伸ばさぬか」
唐突に問うてくる。だがこの質問も毎度のことだった。
「長い髪は任務の邪魔です」
「つまらぬな」
そう言いながらも愛おしそうに黒の瞳を細めてくる。この男にとって子供たちは、飾り置くためのコレクションに過ぎない。気に入った色彩の女を孕ませて、生まれた子供を引き取っては近くに侍らせているというわけだ。
屋敷に住まわせるのは子供たちだけだった。手を出した女たちは住む場所を別に与えて、それぞれきちんと面倒を見ている。それが唯一の救いと言えるだろうか。
この男の瞳には、どのみち狂気が宿っている。理解できるとは思えないし、そうしたいとも到底思えない。歪んだ寵愛を欲する兄弟の多くは、この男にすっかり毒されてしまっている。それが哀れに思えてならなかった。
「先の夜会で女になったであろう? 今宵はあれをせぬか?」
「ご冗談を。任務以外で女装するほど、オレも酔狂ではありませんよ」
「冗談なものか。お前を愛でるのも此れ切りかも知れぬであろう?」
心ない言葉を平然と口にするのは、この男に心がないからだろうと本気で思う。それをものともしないカイ自身も、結局のところ同じ穴の狢だ。
「それにお前は年々男になりよる」
「それはまぁ、男ですから」
「まったくもってつまらぬ」
裏腹に口元に薄く笑みを刷く。常人には感じ得ないうすら寒さがそこにはあった。