寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「お嬢様……とてもお綺麗です」
「ありがとう、エラ」

 ドレスを(まと)ったリーゼロッテを見て、エラは眩しそうに目を細めた。初夏の夜会に相応しい淡いグリーンの美しいドレスだ。だが施された繊細なレースも、飾られた青い守り石も、リーゼロッテの前ではただの引き立て役に過ぎなかった。

「今日はついていくことができずに申し訳ありません……」
「エラは何も悪くないわ。大丈夫。わたくしちゃんとうまくやれるから」

 心の整理がついたかのように、リーゼロッテはやわらかく笑った。この方は逃げることも叶わない。諦めを含んだその笑顔に、エラの胸は締めつけられた。

「そろそろ行きましょう。ジークヴァルト様をお待たせしてはいけないわ」
「はい、お嬢様」

 自分はきっとこれから幾度も、こうやってリーゼロッテを見送るのだろう。誰よりもそばで、誰よりも長く、この細い背を支えていけたなら。

 そう願いながら、エラは先導して部屋の扉を静かに開いた。

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