寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「ダーミッシュ嬢、ブルーメ子爵だ」
「ブルーメ子爵様、お初にお目にかかります。リーゼロッテ・ダーミッシュでございます。子爵様は実父の従兄でいらっしゃると伺っております。お会いできてうれしいですわ」
「こちらこそ、イグナーツ様の愛娘にお会いできるとは、誠に光栄ですな。これからも義娘のルチアともども懇意にしていただけるとうれしい限り」
「ええ、もちろんですわ。わたくしルチア様とすっかり仲良しですの。そうですわよね、ルチア様?」

 リーゼロッテが淑女の笑みを向けると、ルチアの顔が真っ赤になった。

「は、はいっ。ほんと夢みたいです」
「妖精姫は噂通りおやさしい方であるな。ルチアも感謝を忘れるでないぞ?」
「はい、もちろんです!」

 容姿は似ても似つかないが、ふたりはちゃんと父娘に見えた。そう感じてリーゼロッテは自然と笑みを()く。ふと視線を感じて見上げると、ジークヴァルトがじっと見ていた。久しぶりに青い瞳を真っすぐに見つめてしまい、動揺したように目を逸らす。

(不意打ちはやめてほしいのに)

 早まる鼓動をなんとか落ち着けながら、リーゼロッテはいつもの淑女の笑みに戻った。

「では我々はまだ挨拶回りがありますので、ひとまず失礼を」
 ブルーメ子爵がルチアを連れてこの場を辞していく。

 リーゼロッテたちも再び会場を歩きはじめるが、挨拶に来る者も途切れてきた。あとはカイに会えれば、もう帰ってもよくなるだろうか。

「フーゲンベルク公爵」
「ああ、ブラル伯爵か」

 イザベラを連れたブラルに出会い、リーゼロッテは伏し目がちに礼を取った。イザベラの顔を伺うも、今まで通りに自信に満ちた顔つきをしている。

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