寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 気づかわしげに問うてきたエラに、リーゼロッテは自身の腕を見た。昨日ついていた血の(あと)はそこにはない。

「エラ……夕べわたくしに血が付ていたわね?」
「はい、お嬢様」

 その返事に夢ではなかったのだと力が抜けた。

「一体何があったというのですか? お嬢様がどんなひどい目にあったのかと思うとわたしは……」

 エラはぼろぼろと泣き出した。傷はないものの、血のりをつけて帰ってきたのだ。着ていたドレスもあちこち裂けていた。これで心配するなという方が無理というものだろう。

「ち、違うの。あれは異形がまた襲ってきて。それでジークヴァルト様に……」

 そこまで言って、リーゼロッテはぼぼんと真っ赤になった。脳裏に夕べの深い口づけが(よみがえ)る。エラには目視できなかったが、全身から緑の力が盛大に飛び出した。
 再び枕に頭を沈めてしまったリーゼロッテに、エラがあわててクッキーを差し入れる。

「ごめんなさい、エラ……。落ち着いたらちゃんと話すから……信じられないけれど、とてもうれしい話なの。だから、もう少し、ま……って……」

 すぅと再び寝入ってしまったリーゼロッテに、エラは安堵の息を漏らした。リーゼロッテの寝顔は、今とてもしあわせそうだ。

 ()(えが)く唇を見つめ、エラの口元も知らずほころんだ。

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