寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「では、どうやって思いをお伝えになったのでしょう?」
「初恋の相手はお前だと、そう言った」
「は? 何ですか? それ」

 いきなり無理に口づけて初恋はお前だったなどと言われても、あの状態のリーゼロッテの心に響くと思えない。普通に考えてドン引かれるだけだろう。

「マテアスとの話を聞いていたと言っていた」
「わたしとの話?」
「ああ、彼女が庭に出た日のことだ」

 そう言われて、マテアスははっとした。あの会話を聞いて何か誤解をしたのだろう。ジークヴァルトが他の女にうつつを抜かしているとでも思ったのかもしれない。そう思うと、エラの自分への塩対応も納得できた。

「はぁ……何にせよ、よかったです。それでリーゼロッテ様に思いを返していただけたのなら」
「いや」

 即座に否定したジークヴァルトに、マテアスは信じられないものを見る目つきを向けた。

「え……? リーゼロッテ様に思いを受け入れていただけたのですよね?」
「いや、彼女からは特に何も聞いていない。だが、触れても嫌がられなくなった」

 きっぱりと言い切る(あるじ)を前に、マテアスの顔から表情が消える。

「……今のあなたに必要なのは、恋愛指南書(しなんしょ)のようですね。恋愛小説と合わせて簡単な分かりやすいものを見繕(みつくろ)いますので、最低十回はお読みになってください」

 愛の告白の仕方から恋人同士の過ごし方まで、何から何まで教えてやらなくてはならないのだろうか。このままでは、いずれ夫婦生活まで指導しなければいけなくなりそうだ。

「とにかく、明日にでもきちんとリーゼロッテ様に思いをお伝えになってください。そして、必ずリーゼロッテ様からも明確なお返事を」

 その言葉を翌日に後悔するはめになろうとは、思ってもみないマテアスだった。

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