寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
 閉じていた瞳を開いて、そっと手のひらの石を確かめる。そこにあるのは緑が輝く守り石だ。

(でもちょっと気泡が入ってしまったわ)

 胸に下がるジークヴァルトの守り石をすくい上げる。自分のものと見比べると、その差はやはり歴然だった。
 ペンダントを左右に振ると中の青が揺らめいた。たゆとうように流れるその(さま)に、リーゼロッテはほうとため息をつく。

(ヴァルト様の守り石って本当に綺麗……)

 自分の緑もそこそこ綺麗だとは思うが、やはりこの青がいちばん好きだ。何度も石を揺すっては、リーゼロッテはふふと笑った。

(ジークヴァルト様の守り石って、なんだかラ〇ュタの飛行石みたい)

 これがあれば本当に空でも飛べそうだ。実際にリーゼロッテのこころは、これを目にするたびにふわふわと高く飛んでいく。

『ご機嫌だね』

 ニコニコと笑いながら、隣で浮いていたジークハルトが声をかけてくる。我に返ったリーゼロッテは思わず顔を赤らめた。

『石に力を()めるのも、随分と上手になったんじゃない?』
「はい、おかげさまであとひと息ですわ」
『オレは別に何もしてないけど? まぁ最近は、リーゼロッテと聖女がぴったり重なって視えるからね』
「重なって?」
『うん』

 聖女とはリーゼロッテの守護者のことだ。リーゼロッテはこてんと首を傾けた。ジークハルトはいつもジークヴァルトと離れた場所に浮いている。それなのに自分の聖女はくっついているということだろうか?

「それはわたくしと守護者が、同調できているということですか?」
『うん、まぁ、そういうこと』

 リーゼロッテはぱぁっと表情を明るくした。同調できているということは、きちんと力が制御できているという(あかし)だ。王子の守護者も彼の体に溶けるように消えていったし、きっとジークハルトの方がイレギュラーな存在なのだろう。

 そう思って、もう一度ふたつの守り石を見比べる。美しく光を返す青に比べて、リーゼロッテの緑はより硬質な色味に思えた。揺らしてもひと粒の気泡がゆっくりと中を移動していくだけだ。

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