寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
「ダーミッシュ伯爵家としては、婚約にあたって、今述べた条件を契約として付け加えたいと思っております。レルナー公爵家でさらに提示なさりたいことがございましたらなんなりと」
「ひとつ聞くが……どうしてここまでして我が娘を望むのだ?」
「ツェツィーリア様は息子が見染めたお方。親馬鹿ながら、ルカの人を見る目は確かだと思っております。それにレルナー家の大切な姫を伯爵家が望むのです。この条件は妥当かつ当然のことでしょう」
「……そうか。話はわかった。この婚約の申し出、よく吟味させてもらう。返事は、そうだな……一週間以内には答えを出させてもらう。そちらも待たされるのは本意ではないだろう」
「お心遣い感謝いたします」
ダーミッシュ伯爵が部屋から辞すと、レルナー公爵はどさりとだらしなくソファに体を預けた。
「やり手だとは聞いていたが、まったく隙のない男だったな」
「そのようで」
横に立つ年老いた家令がグラスに赤いワインを注いだ。それをゆっくりと口に含みながら、公爵はつぶやくように言う。
「それにしてもなぜツェツィーリアなんだ?」
兄が遺した娘だが、その扱いづらい性格に公爵自身も難儀している。親を失い可哀そうだと思って、はじめのうちに甘やかしたのがいけなかったのかもしれない。
ダーミッシュ家の跡取りは、優秀な少年だとよく耳にする。母親に似て見目も麗しいと評判だ。そんな息子にわざわざツェツィーリアを選ぶ理由が分からない。あのかんしゃく娘の噂は、ダーミッシュ伯爵の耳にも届いていることだろう。
かといって何か裏があって、レルナー家に近づいたようにも思えなかった。なにしろダーミッシュ伯爵家は今、飛ぶ鳥を落とす勢いで繁栄を続けている。娘はフーゲンベルク家に嫁ぐことが決まっているし、今さらレルナー家と繋がりを強く望む理由などないだろう。
「あれを呼んで来い。それとグロースクロイツだ」
仰せのままにと腰を折った家令は、ほどなくしてレルナー公爵夫人とツェツィーリアの従者であるグロースクロイツを連れて戻ってきた。
「ダーミッシュ伯爵家としては、婚約にあたって、今述べた条件を契約として付け加えたいと思っております。レルナー公爵家でさらに提示なさりたいことがございましたらなんなりと」
「ひとつ聞くが……どうしてここまでして我が娘を望むのだ?」
「ツェツィーリア様は息子が見染めたお方。親馬鹿ながら、ルカの人を見る目は確かだと思っております。それにレルナー家の大切な姫を伯爵家が望むのです。この条件は妥当かつ当然のことでしょう」
「……そうか。話はわかった。この婚約の申し出、よく吟味させてもらう。返事は、そうだな……一週間以内には答えを出させてもらう。そちらも待たされるのは本意ではないだろう」
「お心遣い感謝いたします」
ダーミッシュ伯爵が部屋から辞すと、レルナー公爵はどさりとだらしなくソファに体を預けた。
「やり手だとは聞いていたが、まったく隙のない男だったな」
「そのようで」
横に立つ年老いた家令がグラスに赤いワインを注いだ。それをゆっくりと口に含みながら、公爵はつぶやくように言う。
「それにしてもなぜツェツィーリアなんだ?」
兄が遺した娘だが、その扱いづらい性格に公爵自身も難儀している。親を失い可哀そうだと思って、はじめのうちに甘やかしたのがいけなかったのかもしれない。
ダーミッシュ家の跡取りは、優秀な少年だとよく耳にする。母親に似て見目も麗しいと評判だ。そんな息子にわざわざツェツィーリアを選ぶ理由が分からない。あのかんしゃく娘の噂は、ダーミッシュ伯爵の耳にも届いていることだろう。
かといって何か裏があって、レルナー家に近づいたようにも思えなかった。なにしろダーミッシュ伯爵家は今、飛ぶ鳥を落とす勢いで繁栄を続けている。娘はフーゲンベルク家に嫁ぐことが決まっているし、今さらレルナー家と繋がりを強く望む理由などないだろう。
「あれを呼んで来い。それとグロースクロイツだ」
仰せのままにと腰を折った家令は、ほどなくしてレルナー公爵夫人とツェツィーリアの従者であるグロースクロイツを連れて戻ってきた。