寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
傍らで童話を読み聞かせるエラの声が、ふと止まった。同じ寝所の中で横になっていたリーゼロッテは、その話を聞きながら、ツェツィーリアと一緒にうとうとしていたようだ。
「眠ってしまわれた様ね」
横ですやすやと眠るツェツィーリアの寝顔を見やり、リーゼロッテは静かに微笑んだ。
「お嬢様はこのままお休みになられますか? それともハーブティでもご用意いたしましょうか」
「そうね……もしも目覚めた時に隣に誰もいなかったら、ツェツィーリア様が悲しく思うかもしれないわ。明日はお茶会の準備で早起きをしないといけないし、今日はもう眠ってしまおうかしら」
「承知いたしました」
絵本を閉じたエラが、寝室の明かりを小さくしようと立ち上がる。
「ねえ、エラ。ツェツィーリア様はわたくしにどうしてほしいのだと思う……?」
あどけない寝顔を静かに見やりながら、リーゼロッテはぽつりと言った。
初めはジークヴァルトを取られまいとする可愛い嫉妬なのかと思っていた。だがそれならば、ここまで執拗にリーゼロッテについて回る必要はないだろう。
「ツェツィーリア様は龍の託宣の事をご存じなのよね?」
「はい、お話中に託宣の話は何度も出てきましたから」
「そう……」
密やかな寝息が漏れる少し尖った小さな唇は、本当に可愛らしい人形のようだ。
「ツェツィーリア様はおさびしいのかもしれませんね」
リーゼロッテが視線を向けると、同じように寝顔を見つめていたエラは、眠るツェツィーリアを起こさないように小さな声で続けて言った。
「ツェツィーリア様のご両親は、数年前に流行り病で亡くなられたと聞き及んでおります。レルナー公爵家はユリウス様のお兄様が跡を継がれて、ツェツィーリア様はそのまま養子に迎え入れられたそうです。ですが、レルナー公爵様にお世継ぎが誕生してからというもの、ツェツィーリア様は肩身の狭い思いをなさっているらしくて……」
「そうだったの」
それでジークヴァルトはツェツィーリアの滞在を何も言わずに許しているのだ。リーゼロッテは小さく息をついた。
「嫌われているのでなければいいのだけれど」
ツェツィーリアの態度はジークヴァルトを取られたくないというより、こちらの気を引きたい、ただそれだけのようにも感じられた。
「いずれにせよ、お嬢様が何かをしなければならないということはございません」
「大丈夫よ、エラ。わたくしはただ、ツェツィーリア様と仲良くなりたいだけよ」
諭すようなエラの言葉の中に心配が見て取れて、リーゼロッテは安心させるように笑みを作った。
傍らで童話を読み聞かせるエラの声が、ふと止まった。同じ寝所の中で横になっていたリーゼロッテは、その話を聞きながら、ツェツィーリアと一緒にうとうとしていたようだ。
「眠ってしまわれた様ね」
横ですやすやと眠るツェツィーリアの寝顔を見やり、リーゼロッテは静かに微笑んだ。
「お嬢様はこのままお休みになられますか? それともハーブティでもご用意いたしましょうか」
「そうね……もしも目覚めた時に隣に誰もいなかったら、ツェツィーリア様が悲しく思うかもしれないわ。明日はお茶会の準備で早起きをしないといけないし、今日はもう眠ってしまおうかしら」
「承知いたしました」
絵本を閉じたエラが、寝室の明かりを小さくしようと立ち上がる。
「ねえ、エラ。ツェツィーリア様はわたくしにどうしてほしいのだと思う……?」
あどけない寝顔を静かに見やりながら、リーゼロッテはぽつりと言った。
初めはジークヴァルトを取られまいとする可愛い嫉妬なのかと思っていた。だがそれならば、ここまで執拗にリーゼロッテについて回る必要はないだろう。
「ツェツィーリア様は龍の託宣の事をご存じなのよね?」
「はい、お話中に託宣の話は何度も出てきましたから」
「そう……」
密やかな寝息が漏れる少し尖った小さな唇は、本当に可愛らしい人形のようだ。
「ツェツィーリア様はおさびしいのかもしれませんね」
リーゼロッテが視線を向けると、同じように寝顔を見つめていたエラは、眠るツェツィーリアを起こさないように小さな声で続けて言った。
「ツェツィーリア様のご両親は、数年前に流行り病で亡くなられたと聞き及んでおります。レルナー公爵家はユリウス様のお兄様が跡を継がれて、ツェツィーリア様はそのまま養子に迎え入れられたそうです。ですが、レルナー公爵様にお世継ぎが誕生してからというもの、ツェツィーリア様は肩身の狭い思いをなさっているらしくて……」
「そうだったの」
それでジークヴァルトはツェツィーリアの滞在を何も言わずに許しているのだ。リーゼロッテは小さく息をついた。
「嫌われているのでなければいいのだけれど」
ツェツィーリアの態度はジークヴァルトを取られたくないというより、こちらの気を引きたい、ただそれだけのようにも感じられた。
「いずれにせよ、お嬢様が何かをしなければならないということはございません」
「大丈夫よ、エラ。わたくしはただ、ツェツィーリア様と仲良くなりたいだけよ」
諭すようなエラの言葉の中に心配が見て取れて、リーゼロッテは安心させるように笑みを作った。