寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 お代わりの紅茶が注がれる頃、イザベラが兄のニコラウスを従えてやってきた。相変わらずのたれ目の兄妹だ。

「みなさん、ご機嫌よう」
「ようこそおいでくださいました」

 リーゼロッテが立ち上がって微笑むと、びよんと縦ロールを弾ませながらイザベラはふんと大きく鼻で(わら)った。

「自分の家でもないくせに随分と大きな出迎えをするのね」
「おい、イザベラ! お前なんてことを……! 妹が失礼なことを言って申し訳ない」

 ニコラウスが慌てて頭を下げた。ニコラウスはアデライーデの指令でこのお茶会に付き添うことになった。自分がいたからと言って、この妹の暴走を止められる気はしないのだが、しかし、無責任にイザベラを単身公爵家へと放り込むこともできなかった。

「何を謝っているのよ、お兄様。今日お兄様はグレーデン様に呼ばれてこちらにお伺いしたのでしょう? ここはわたくしに任せてさっさと行ってきてくださいな」
「だからそれが心配なんだろうがっ」

 心なしかエラの視線が冷たいような気がする。ニコラウスはこの場に来たことを既に後悔し始めていた。

「エーミール様は到着までにまだしばらくかかるとのことですわ」
「でしたらニコラウス様も、こちらでお茶をご一緒なさいませんか?」

 エマニュエルの言葉を受けてリーゼロッテが周囲に目配せを送ると、あっという間にイザベラの隣にニコラウスの席が用意されてしまった。それを断ることもできずに、キリキリと胃が痛む中、ニコラウスはイザベラと共に席についた。

「まあ、悪くないわね」

 もてなしのスイーツと紅茶を何口か味わうと、イザベラは不遜な態度で言った。

「おまっ、なんて物言いをするんあだだだだだだ」
「お兄様は黙ってて。いちいち煩いですわ」

 イザベラに太ももをつねられて、ニコラウスは涙目で悶絶している。

「いいのよ、わたくしはいずれこの家に嫁ぐ身ですもの。使用人の技量を量るのも公爵夫人の役目だわ」

 そのイザベラの言葉に、使用人も含めたその場にいた者すべてが真顔になった。

「あら、公爵様のご婚約者はリーゼロッテ様でいらっしゃいますわ」
 そんな空気の中、ひとりのほほんとした様子でヤスミンが紅茶を一口飲んだ。

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