寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「なんと! リーゼロッテ様はヒカリダケをご覧になられたのですか?」
「ヒカリダケ?」
某モバイル企業のマスコットのような名前に、リーゼロッテは訝し気に小首をかしげた。
「ヒカリダケ、通称、かがやきのこと申しまして、書いた者の思いが極限まで込められたときに、その書物に生えるという伝説のきのこでございます」
「伝説のかがやきのこ……」
レジェンドの割にはダジャレなネーミングにうさん臭さを覚えつつ、リーゼロッテは古びたその本を開いてみた。
「……これ、本ではなくて日記だわ」
製本はされているが、書物というよりノートのような仕立てだった。日付とその日にあった出来事が、流れるような美しい文字で数行ずつ綴られている。日記はページの三分の二くらいまで埋められており、そのあとは白紙が続いていた。
パラパラとページをめくってから、リーゼロッテはすぐにその日記を閉じた。
「お読みになられないのですか?」
「だって、昔のものとはいえ、人様が書いた日記だもの。わたくしだったら、読まれたくないってきっと思うわ」
「そうでございましょうか?」
いつになく反論してきたマテアスに、リーゼロッテは視線を向けた。
「いえ、その日記に関しましては、リーゼロッテ様に読んでほしいと思っているのかもしれません。かがやきのこは、故人の日記に多く現れるとの逸話も残っております。リーゼロッテ様のお目に留まったのも何かのご縁でしょう」
「そうね……そういうことなら、少しだけ見てみようかしら」
リーゼロッテが再び日記を広げると、マテアスは頷いて自身も書類仕事に手を伸ばした。ジークヴァルトとマテアスがせわし気に書類の束に格闘している中、リーゼロッテは静かにページをめくっていった。
その日の天気、庭に咲いた花の美しさ、お茶会の様子、舞踏会に着ていくドレスの話。所々、にじんだり紙が痛んだりして読めないこともあったが、日記にはそんな内容のことが、日付が途切れることなく綴られていた。
(内容から察するに、フーゲンベルク家の令嬢が書いた日記みたいね)
時折、婚約者のことが話題に上る。この公爵令嬢の婚約者は王族のようだ。
(でも、少し病弱なお相手のようね)
「ヒカリダケ?」
某モバイル企業のマスコットのような名前に、リーゼロッテは訝し気に小首をかしげた。
「ヒカリダケ、通称、かがやきのこと申しまして、書いた者の思いが極限まで込められたときに、その書物に生えるという伝説のきのこでございます」
「伝説のかがやきのこ……」
レジェンドの割にはダジャレなネーミングにうさん臭さを覚えつつ、リーゼロッテは古びたその本を開いてみた。
「……これ、本ではなくて日記だわ」
製本はされているが、書物というよりノートのような仕立てだった。日付とその日にあった出来事が、流れるような美しい文字で数行ずつ綴られている。日記はページの三分の二くらいまで埋められており、そのあとは白紙が続いていた。
パラパラとページをめくってから、リーゼロッテはすぐにその日記を閉じた。
「お読みになられないのですか?」
「だって、昔のものとはいえ、人様が書いた日記だもの。わたくしだったら、読まれたくないってきっと思うわ」
「そうでございましょうか?」
いつになく反論してきたマテアスに、リーゼロッテは視線を向けた。
「いえ、その日記に関しましては、リーゼロッテ様に読んでほしいと思っているのかもしれません。かがやきのこは、故人の日記に多く現れるとの逸話も残っております。リーゼロッテ様のお目に留まったのも何かのご縁でしょう」
「そうね……そういうことなら、少しだけ見てみようかしら」
リーゼロッテが再び日記を広げると、マテアスは頷いて自身も書類仕事に手を伸ばした。ジークヴァルトとマテアスがせわし気に書類の束に格闘している中、リーゼロッテは静かにページをめくっていった。
その日の天気、庭に咲いた花の美しさ、お茶会の様子、舞踏会に着ていくドレスの話。所々、にじんだり紙が痛んだりして読めないこともあったが、日記にはそんな内容のことが、日付が途切れることなく綴られていた。
(内容から察するに、フーゲンベルク家の令嬢が書いた日記みたいね)
時折、婚約者のことが話題に上る。この公爵令嬢の婚約者は王族のようだ。
(でも、少し病弱なお相手のようね)