寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 天候と共に、相手の体調を気遣うような日記が幾度も書かれていた。
 それ以外は微笑ましく思えるような日常だ。夕食のメニューがどうだったとか、今流行りのファッションについてだとか、他家の茶会で出てきた菓子が美味しかったとか、時には父親に対する愚痴みたいなことも綴られている。

(ふふ、いつの時代も女の子は変わらないものね)

 どれも共感できるような内容だ。微笑ましく思って、リーゼロッテはさらにページをめくった。

(あら?)

 新しいページには、それまでの三倍以上の行で日記が書かれていた。文面から見ても、かなり興奮気味なのが伺える。それは、素敵な人に出会ってしまった、彼こそ自分の運命の人だというような内容だった。

(え? 運命の人って……あなた、婚約者がいるのよね?)

 はらはらしながらページをめくる。

 その次の日もその次も、切ない恋心が綴られていた。会えない日には胸を焦がし、その姿を見た日は思いが募り、会話をした時の彼はどんなだったとか、甘い内容がしばらく続く。そんな日々を重ね、公爵令嬢はとうとう従者の手引きで、その相手と逢引することになったようだ。

 ごくりとのどが鳴る。すっかり夢中になって、リーゼロッテは日記を読み進めた。

 逢引した日の日記には、彼がどんなにすばらしい人なのか、のろけ話が延々と書かれていた。初めての口付けを交わし、天にも昇る思いだと夢見心地に語られている。

(いや、だからあなた婚約者が……)
 突っ込みを入れつつページをめくった。

(ええ? 今度は駆け落ちをする気なの!?)

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