寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
婚約者の事は尊敬しているが、自分が愛するのは彼だけだ。苦し気に綴られる彼女の思いは本物のようだ。だが、貴族が駆け落ちするとなると、その先の生活はどうするのだろうと心配になってくる。
(一応、相手の人も身を引く覚悟はあったみたいね……)
自分のしあわせを願い、去ろうとする恋人を必死に引き留める公爵令嬢。そのすったもんだの末に、ふたりは駆け落ちをする決意を固めたらしい。
(あ! お父様に見つかって幽閉に!?)
駆け落ちがバレて、とうとう部屋へと閉じ込められてしまった。怒涛の展開にすっかり夢中のリーゼロッテは、日記の主に感情移入しまくりだ。
次のページにはたった一行だけ綴られていた。震えるような力ない文字だった。
『わたくしのせいであの方が死んでしまった』
(え? 駆け落ち相手は死んでしまったの?)
しかし、そのページが最後の日記だった。それ以降は白紙が続いている。呆然となって白いページを眺めていると、開かれた日記から一気に光の渦が広がった。
『カーク様……レオン・カーク様』
慟哭の声がする。
『わたくしも、今すぐあなたのおそばへ参ります』
冷たい雨の中飛び出した。
逢瀬を重ねたあの木の下で、どうか、どうかあの方の元へ――
激しい雨に奪われる熱。それでもまだ、この命は尽きてはいない。その手を自身の首に導き、乞い願う。
『お願い、ジョバンニ。――わたくしを殺して』
その刹那、大きな至福に包まれた。
『ああ……カーク様……ようやくあなたの元へ……』
これでひとつになれる。縛られた運命を、すべて捨て去って――
「ダーミッシュ嬢!」
肩を強く揺すぶられて、リーゼロッテははっと顔を上げた。同調していた意識が引きはがされ、いまだ混乱しながらジークヴァルトの瞳の青を見つめる。
「――これは、オクタヴィアの日記なんだわ」
鳴りやまぬ鼓動が耳につく。リーゼロッテの瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。
(一応、相手の人も身を引く覚悟はあったみたいね……)
自分のしあわせを願い、去ろうとする恋人を必死に引き留める公爵令嬢。そのすったもんだの末に、ふたりは駆け落ちをする決意を固めたらしい。
(あ! お父様に見つかって幽閉に!?)
駆け落ちがバレて、とうとう部屋へと閉じ込められてしまった。怒涛の展開にすっかり夢中のリーゼロッテは、日記の主に感情移入しまくりだ。
次のページにはたった一行だけ綴られていた。震えるような力ない文字だった。
『わたくしのせいであの方が死んでしまった』
(え? 駆け落ち相手は死んでしまったの?)
しかし、そのページが最後の日記だった。それ以降は白紙が続いている。呆然となって白いページを眺めていると、開かれた日記から一気に光の渦が広がった。
『カーク様……レオン・カーク様』
慟哭の声がする。
『わたくしも、今すぐあなたのおそばへ参ります』
冷たい雨の中飛び出した。
逢瀬を重ねたあの木の下で、どうか、どうかあの方の元へ――
激しい雨に奪われる熱。それでもまだ、この命は尽きてはいない。その手を自身の首に導き、乞い願う。
『お願い、ジョバンニ。――わたくしを殺して』
その刹那、大きな至福に包まれた。
『ああ……カーク様……ようやくあなたの元へ……』
これでひとつになれる。縛られた運命を、すべて捨て去って――
「ダーミッシュ嬢!」
肩を強く揺すぶられて、リーゼロッテははっと顔を上げた。同調していた意識が引きはがされ、いまだ混乱しながらジークヴァルトの瞳の青を見つめる。
「――これは、オクタヴィアの日記なんだわ」
鳴りやまぬ鼓動が耳につく。リーゼロッテの瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。