寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 言われて見ればそうかもしれない。オクタヴィアは龍から託宣を受けた身だ。ジョンが龍の鉄槌を受け星に堕ちたというのなら、オクタヴィアの命はそれにより助かったのだ。

『龍から託宣を受けた者は、それを果たすまで死ぬことすら許されない。例え、死んだほうがましって目にあおうともね』

 ふいにジークハルトの言葉が蘇る。オクタヴィアは託宣を果たすべく、カークを追って死ぬことはできなかったのだ。

(じゃあ、ジョンやカークの死は無駄だったってこと……?)

 ぎゅっと胸が締め付けられた。先ほど流れ込んできたオクタヴィアの思いが蘇る。この事実を、オクタヴィアはどんな気持ちで受け止めたのだろうか。

「わたしが調べたところでは、男児が誕生した後、婿入りした王弟殿下はまもなく病死されています。その後オクタヴィア様は、当時のカーク子爵と再婚されたようですね」
「ええっ!?」

 らしからぬ大きな声を上げて、リーゼロッテは椅子から立ちあがった。テーブルに両手をつき、前のめりにマテアスに問うてくる。

「オクタヴィアはカーク家へお嫁に行ったの!?」
「はい、記録ではそのように。カーク子爵家がフーゲンベルク家の傍系貴族になったのも、それがきっかけのようですし……」

 マテアスの言葉にリーゼロッテは呆然とした様子だった。

「どういうことなの……? カークは冷たい雨に降られた後、亡くなったって……」
「カーク子爵家へ行けば、もっと子細な記録が残っているかもしれませんが」

 困惑気味に答えるマテアスに、リーゼロッテは決意したように頷いた。次いでジークヴァルトの顔を仰ぎ見る。

「ヴァルト様、お願いでございます。わたくしを、カーク子爵家へ行かせてくださいませ」

 必死の懇願に、ジークヴァルトの眉間のしわが一層深まった。

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