寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「うーん、収穫なしか」

 残念そうに言って、カイは両手を上げて伸びをした。

「ねえ、リーゼロッテ嬢。公爵家の奥書庫でヒカリダケを見たんだって? ここにも生えてたりしないかな?」
「そうおっしゃられましても……」

 本棚を見回してみるものの、光る本などどこにも見当たらない。

「まあ、そう都合よくいかないか」

 肩をすくめたカイは扉へと向かった。リーゼロッテもそれに続こうとする。

 コトリ、と耳元で音がした。リーゼロッテは部屋を振り返る。

「どうしたの?」
「何か、音がしませんでしたか?」
「音?」

 カイは警戒したように部屋の中央へと戻ってきた。気配を探るが不審な動きはない。

「ユリウス様はどうです?」
「いや、オレも何も感じないな」

 同様に部屋を見回していたユリウスもまじめな表情で返した。

「わたくしの気のせいだったのでしょうか……?」

 それにしては、やけに耳につく音だった。遠くで鳴ったのに、すぐ耳元で聞こえるような。その瞬間、再びコトリと音がした。

「あ! また鳴りましたわ!」

 その言葉に、カイとユリウスが目を見合わせた。

「何も聞こえなかったけど」
「オレもだ」

 そう言いながらもふたりは、リーゼロッテを守るように立ち、部屋の中を見回した。

「カイ様、あちらが……」

 そう言ってリーゼロッテは部屋の一角を指さした。その先にあったのは、窓の近くに置かれたチェストだ。

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