野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
中宮(ちゅうぐう)様も(むらさき)(うえ)も最高のお美しさで、
<おふたりの命をこのまま永遠に(とど)めたい>
源氏(げんじ)(きみ)は思われるけれど、もちろんそれはできない。
悲しそうなお顔をご覧になって、紫の上が弱々しくおっしゃる。
「もうお部屋へお帰りくださいませ。ひどく苦しくなってまいりました。お別れが近づいているとはいえ、このような姿をお見せしつづけるのは、あまりに失礼でございますから」
力の出ないお手でついたてを少しだけ寄せて、横になられる。
そのご様子がいつも以上に弱々しい。

思わず中宮様はお手をとって、泣きながら養母君(ははぎみ)のお顔をご覧になる。
風に吹き飛ばされた(つゆ)のように頼りないご表情なの。
お祈りをする僧侶(そうりょ)を呼ぼうと女房(にょうぼう)たちが立ち騒ぐ。
四年前は、妖怪(ようかい)が一度亡くなったように見せかけた。
今回も妖怪のしわざかもしれないと、一晩中さまざまなお祈りをしつくされる。
でもその甲斐(かい)もなく、夜が明ける少し前に、露のようなお命は消えてしまった。
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