野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
上皇(じょうこう)様の中宮(ちゅうぐう)様からもお見舞いがたびたび届く。
亡き六条(ろくじょう)御息所(みやすんどころ)姫君(ひめぎみ)で、源氏(げんじ)(きみ)後見(こうけん)して入内(じゅだい)させなさった方よ。
(むらさき)(うえ)ともご交流があった。
六条(ろくじょう)(いん)にお(さと)()がりなさったときには、春の御殿(ごてん)の紫の上と秋の御殿の中宮様とで、どちらの季節が上か張り合っていらっしゃったわ。

「秋の草花はすっかり()れて寂しくなりました。こういう景色が紫の上はお嫌だったのだろうと、今になってようやく分かりました」
どなたからのお手紙にも反応の薄い源氏の君だけれど、このお手紙は繰り返しご覧になる。
<風流なやりとりで心を(なぐさ)められるお相手は、もうこの中宮様だけでいらっしゃる>
お悲しみも少しまぎれるけれど、中宮様と紫の上の華やかなご交流を思い出されるとまた涙がこぼれる。

(とうと)いお住まいからどうぞご想像くださいませ。生きることにも秋という季節にも、うんざりしてしまった私でございます」
お返事をお書きになって、外をぼんやり(なが)めていらっしゃる。
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