野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
めずらしくずっと起きておられたせいか、翌日は苦しくて()せってしまわれた。
(むらさき)(うえ)には覚えておきたいものがたくさんおありだったの。
長年、源氏(げんじ)(きみ)が音楽会を開かれるたびに集まっていらっしゃった方たちの、それぞれのお姿と、音楽の才能や音色。
これが最後だと思うと、いつもは気になさらないような人の顔までしみじみとご覧になった。

花散里(はなちるさと)(きみ)明石(あかし)(きみ)とのお別れはもっとおつらい。
源氏の君にもっとも愛される女君(おんなぎみ)として負けられないお気持ちはあったけれど、十年二十年のお付き合いのうちに、ゆるぎないご友情もできあがっていた。
<どなたも永遠に生きることはできない。しかし最初に私が旅立つのだ>
法要(ほうよう)が終わって、女君たちは六条(ろくじょう)(いん)へお帰りになろうとする。
永遠のお別れのような気がして、紫の上は花散里の君に声をおかけになった。

「これが私の最後の法要になるでしょうが、来世(らいせ)来々世(らいらいせ)も、きっとあなたと出会って仲良くなれると信じています」
花散里の君がやさしくお返事なさる。
「仏様が私たちを深いご(えん)で結んでくださいましたから、きっとそうなると私も安心しております。私の寿命(じゅみょう)もまもなくでしょう。すぐにお会いできると存じます」
紫の上は二条(にじょう)の院に残って、他にもいくつかのご法要をなさる。
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