野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
(さん)(みや)様は、たくさんの中宮(ちゅうぐう)様のお子たちのなかでとくにおかわいらしい。
幼児らしく活発に動き回っていらっしゃるのを、(むらさき)(うえ)は少しご体調のよいときにお呼びになった。
近くに女房(にょうぼう)がいないことを確認してから、ちょこんとお座りになった三の宮様にお尋ねになる。
「もし私がいなくなってしまったら、宮様は思い出してくださいますか」
三の宮様はすぐにおっしゃる。
「寂しくて会いたくなるよ。私は(みかど)よりも中宮(ちゅうぐう)様よりも、おばあ様が好きなのだもの。いなくなってしまわれたら、ずっとご機嫌(きげん)ななめになってしまう」
お目をこすって涙をごまかすご様子が(いと)しくて、紫の上は微笑(ほほえ)みながら涙をこぼされる。

「宮様が大人におなりになったら、この二条(にじょう)(いん)に住んでくださいませね。お庭の紅梅(こうばい)と桜の季節には、花を()でて、ときどき仏様にもお(そな)えしてあげてくださいね」
三の宮様はうなずくと、じっと祖母君(そぼぎみ)のお顔をお見つめになる。
涙が落ちそうになったので、さっと立ってどこかへ行ってしまわれた。
紫の上は、この三の宮様と(おんな)(いち)(みや)様を特別にかわいがってお育てになったから、ここまででお別れになってしまうことを残念に悲しくお思いになっている。
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