野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
やっと秋になった。
少し涼しくなればお具合も多少はよくなるはずとどなたも期待なさったけれど、そううまくはいかない。
お心細くて、(むらさき)(うえ)はよくご病床(びょうしょう)で泣いていらっしゃる。
中宮(ちゅうぐう)様はそろそろ内裏(だいり)へお帰りにならなければいけない。
本当は、紫の上は「もう少しこちらにいてくださいませ」とお願いなさりたい。
でも、(とうと)いご身分の中宮様をお()()めするのは恐れ多いし、(みかど)から「帰ってくるように」というご伝言が頻繁(ひんぱん)にあるの。

お引き留めもできず、かといって中宮様のお部屋へも上がれずにいらっしゃるうちに、中宮様が紫の上のご病室にお越しになった。
恐れ多いけれど、お見舞いをお断りするのも残念で、特別にお席を準備して中宮様にお入りいただく。

紫の上はこれ以上なく()せておられた。
それが皮肉(ひにく)にも、ご様子をこれ以上なく上品で優美(ゆうび)に見せる。
中宮様は<最高の美女だ>とはっとなさる。
明るさや健康的な(にお)いを()()とした美女は、ただ可憐(かれん)で、ひたすら美しいだけ。
もはや花などには例えられない。
そういう人が心細そうになさっているご様子は、何でごまかすこともできず、そのまま中宮様のお心を苦しめるの。
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