すれ違いだらけの婚約関係は、3年越しのファーストキスでやり直しましょう ~御曹司の婚約者が嫉妬深いなんて聞いてません!!~
半ば走るようにドアノブに手をかけた時、耳元でバンッと大きな音が聞こえた。
「ヒッ、」
「なあ、誰に泣かされたんだ?」
壁際に追い込まれた私は、ひたすらにぷるぷると震えていた。意を決して顔を上げると、怒ったように目を細める高見さんがそこにいた。
彼は私に興味がない、、はずだ。
そんなことを考えていると、呆れたように笑われた。笑顔ではあるが、目が笑ってない。
「ハッ、無視か。それとも、俺に言えない相手か?」
噛み付くような深いキス。一瞬何が起こったのか分からないまま、ただただ貪り喰われる。
漏れた息と怪しく光る瞳に、ゾクリとした。
「ぁ、待って、」
「今まで十分待った」
熱を帯びた視線に、体が縫い止められる。
なんで、どうして、
すっかり涙が引っ込んだ私は、
「…なんで私に構うんですか」
もう言葉を包み隠すことができなかった。
ポツリとこぼした言葉に、高見さんは動きを止めた。意を決して、口を開く。
「私は、たしかに高見さんの婚約者です。でも、結局は祖父同士が決めたものですよね。…無理に私に構わなくていいですよ」
「…は?」
「高見さんほどの容姿があれば、きっと好意を寄せる人も沢山いるのでしょう?私としては、浮気は構いませんが、お相手は快く思わないことでしょう」
「何を言って、」
「…私以外の方を悲しませないでください。お願いします」
高見さんは、戸惑ったような表情をしていた。まるで、何が起きたのか分からないと言っているようだ。
「……色々物申してすみませんでした。もう、寝ます」
ふらりとリビングを出る。そして、そのまま自室のベッドに倒れた。眠気で考えがまとまらない。
そんなことを思っている間にも、瞼は閉じた。