貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

 明人の意地悪い笑みに、声に、囁きに、脳が痺れたように何も考えられなくなっていく。

 これから起こること全てに期待しているなんて、言えるわけがない。

 なのに、明人は一向に手加減してくれない。

「詩乃さん。『なにもしない』のが、あなたのお望みなんですか?」

 明人の長い指が、そっと詩乃の頬に触れる。

 優しい指先が少しひんやりしていて、そのとき初めて、頬が燃えるように熱くなっているのに気がついた。

「…………いじわる……っ」

 ぞくりと、激しく甘い疼きが下腹に走る。

 やっとのことで呟くと、明人はふっと微笑んだ。

「失礼しました」

 そのまま、流れるように寝室まで連れられる。

(ああ、ついに……)

 夢見心地でベッドに身を投げると、明人は詩乃に覆い被さるように身体を横たえた。

「今から、あなたを抱きます。いいですか?」

 とても優しいのに、危ういくらいの色気が香る、甘く低い声。

 詩乃は返事の代わりに、腕を伸ばして彼の身体ごと引き寄せ、深く口づけた。

「あなたという人は……っ」

 唇が離れた一瞬に絡み合った視線を受けて、詩乃は、撃たれるような興奮が全身を貫くのを感じた。

「……我慢が、出来なくなるでしょう……っ」

 明人の昂りを必死に押し殺したような声は、獣のようですらあった。

 至近距離で瞬く目が、はっきりと欲望にかられている。
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