貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
「お返し、何がいいか調べておきます」
「ありがとう。うちにも招待しようね」
友人たちがこの部屋に遊びにくることを考えると、自然と笑みが溢れた。
これまでは、明人を客人として迎える立場だった。
これからは、ふたりで友人たちをもてなすようになるのだ。
交友関係も、さらに広がるだろう。
「……あ」
出掛ける準備をしようと向き直った詩乃が、テーブルの上に一冊だけ置いてある本に目を留めた。
正確には、本革のブックカバーに包まれた一冊の小振りな本だ。
「これ、クリスマスにあげたやつ。持ち歩いててくれたんだね」
本が詰まった箱はまだ開封していないので、おそらくカバンに入れてずっとそばに置いているのだろう。
ほんの数ヶ月前に渡したばかりだが、もうほんのりと使い込まれた革の味わいが出ている。
「中、見てもいい?」
確か明人は、アナログの手帳を使っていないはずだ。
ということは、中身は本なのだろう。
「どうぞ」
答えた明人は、なぜか少し恥ずかしそうにしている。
「……これは……詩集?」
「そうです。詩乃さんが、初めて私に贈ってくれた……」
ページを繰ると、何度も読み返したような形跡があった。