貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
初めてのおうち訪問
「お邪魔します」
「どうぞ、入って入って」
次の土曜日。明人は、詩乃の住む部屋に食材を持ってやってきた。
明人は休日でも、細身の黒のパンツに清潔感のあるグレーのシャツを合わせている。
オフィスにでも着ていけそうな格好だ。
着慣れたパーカーにショートパンツでくつろいでいた詩乃とは、対照的な服装だった。
「わ! 食材たくさんある。重かったでしょ、ありがとうね」
部屋の様子をあまりじろじろ見ないようにしながら、明人は詩乃に食材を手渡した。
「いえ」
引っ越してまだ日が浅い詩乃の部屋は、ほどよくモノが増えていた。
1LDKの部屋は、思ったよりも広い。
寝室は扉で遮られて見えないので、明人はほっとした。
「いい感じの部屋でしょ? 色々揃えたんだ」
小さなテレビの前には木のローテーブルがあり、こじんまりとした座椅子がひとつ置いてある。
部屋の端には低い棚があり、そこには小さな人形やアロマポットが等間隔で並べられていた。
モノは多いが、整頓されて掃除は行き届いている。
「いいと思います」
詩乃が可愛いと思う部屋の世界観が、上手く表現された室内だ。
女性の部屋をじっくり観察する後ろめたさを感じなくはなかったが、明人は素直に良い部屋だと思った。
「では、さっそく作りましょうか」
「やったー! お願いしまーす」