ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 エドガーにはギリギリまで秘密にしておいて、いざ上手くいかなかったらライラを押しつける算段か。

(お父様ならいかにも考えそうなことね。とんだタヌキだわ……)

 そう思ったのと同時に、あのタヌキ親父が、とエドガーが呟いた。
 まったく同じことを考えていたことに、驚いてアンドレアは目を丸くした。

「あ、いや、悪かった」

 いきなりエドガーがすまなそうな顔になる。

「アンドレアにとっては立派な父親だったな。俺の暴言だった、すまない」

 珍しく困り顔のエドガーに、アンドレアはくすくすと笑いだした。

(そうよ、エドガーは昔からこうだったわ)

 捉えどころのない性格で、どこか気が利かなくて。
 それでも不器用なやさしさを、時折見せてくれる彼だった。

「なにを笑っているんだ」
「だって、今わたくしも同じことを考えていたから」

 ひとしきり笑ったあと、アンドレアはふと顔を曇らせた。

「ライラのことは、謝っても謝り切れないわ……」

 今回はアンドレアのときと事情が違い過ぎる。
 ポールとライラの痴情に、欲をかいたケラー侯爵が上手く乗っかった結果のことだ。

「別に気にしてない。その点ではライラを放っておいた俺にも責任があるわけだしな」
「それは極論ではなくて?」
「いや、本当に別段どうでもいいと思っている」
「そう……やっぱりライラとは年が離れすぎていたものね……」

 十歳近く離れていれば、興味が持てなくても仕方がないことかもしれない。
 だがエドガーは静かに首を振った。

「ライラでも別の誰かでも、もうどうでもいいんだ。結婚相手は跡取りさえ産んでくれればそれでいい」
「そんな他人事みたいに……」

 どこか遠い目で言うエドガーにアンドレアは戸惑った。
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