失恋したので復讐します
三章 彼女に協力する理由

「彼女が前に話してた子?」
 千尋が帰るとすぐに、アウロラのオーナー、高(たか)柳(やなぎ)昴(すば)流(る)が近づいてきた。
「まあ……」
 穂高はうなずいたが、面倒くさそうな気持ちは隠していない。これで普通の人なら聞かれたくない話だと察してくれる。
 しかし昴流はおかまいなしに踏み込んでくる厄介だ。
「一緒にジム通いなんて仲がいいな」
 興味津々といった様子で、穂高の反応をうかがっている。
「昴流さんが俺にも勧めたからじゃないですか」
「いつもの穂高なら秒で断ると思うけど」
「ちょうど運動不足を感じてたので」
「素直じゃないな~。千尋ちゃんが、ジムに通うのは初めてだから少し緊張しますって言ったのを聞いて心配になったんだろ?」
 にやにやと意味ありげな笑みを浮かべる昴流を、穂高は冷ややかな目で睨んだ。
 しかし昴流の発言は完全に的外れというわけではない。
(彼女は抜けてるところがあるから、なんか放っておけないんだよな……)
 会社では二年先輩だが、年上という感じがまったくしない。見ていると心配になるような頼りなさがある。
(お人よしすぎるというか……)

 ──穂高が建築デザイン部に配属になったばかりの頃、事務処理の方法などを千尋から教えてもらった。
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