失恋したので復讐します
千尋は思わず目を見開いた。その様子を見た穂高が困ったように眉尻を下げる。
「俺がこんなことを言うのは意外? でも本心だから」
「本心……」
「俺、山岸さんが好きなんだ。初めは辻浦さんを見返すために、協力するだけのつもりだったけど、いつの間にか惚れてた」
「う、嘘?」
自分は幻聴でも聞いているのだろうか。うれしいことのはずなのに信じられなくて現実味が湧かない。
「嘘じゃない。以前、山岸さんのいいところを話しただろ? あれは全部本音」
「ほ、本当に?」
恐る恐る確認する千尋に穂高がうなずく。それはうっとりするほど美しい表情だった。
「ほんと。山岸さんが好きだよ。辻浦さんに嫉妬するくらい」
「す! 好きって……」
かあっと頬に熱が集まる。信じられないけれど、穂高は真剣に言ってくれた。
(相川君が私を好き?)
そんなことは考えたことがなかった。穂高にとって自分はそういう対象ではないと思っていたから。
(私たちは辻浦君に復讐するための関係だから)
でも今、千尋を見つめる穂高は本当の気持ちを言ってくれているように見える。
喜びが胸の中を満たしていく。それはだんだんと現実味を帯びていき、抑えられない想いがあふれる。
「私も……私も相川君が好き」
その言葉は穂高にとって予想外だったのか、彼の目が見開かれる。
「避けてたのは気持ちがばれそうで不安だったから。元カレにやり返そうとしてるのに、ほかに好きな人ができたなんて駄目なんじゃないかと思って……」
千尋の言葉が終わると沈黙が訪れる。
それから数秒後、穂高が満面の笑みになった。
「ありがとう」
「うん、私もありがとう」
千尋も晴れやかな笑顔になる。
心の中は幸せでいっぱいだ。
穂高が、千尋をまっすぐ見つめる。
「好きだよ」
「わ、私も……す、好きです……」
クールでドライだと思っていた穂高の言葉に、頬が熱くなる。
「あの、うれしいけど恥ずかしくて」
千尋の心臓は、さっきからずっとドキドキしっぱなしだ。
「俺も同じだよ。でも言葉にしないと伝わらないだろ?」
そう言う穂高は、よくみるとちょっと照れ臭そうだった。
食事の後はふたりで夜の通りを歩き大きな公園に寄った。
暗い時間でも危なくないように、あちこちに明かりがついた公園は、千尋たちのようなカップルが何組もいた。
親しそうに腕を組んで歩く様子を見ていると、千尋も穂高と手をつなぎたい気持ちにかられた。
そんな気持ちが穂高に伝わったのか、彼の大きな手がそっと千尋の手を包み込んだ。
目が合うとお互いうれしくて微笑み合う。
「……なんだかうれしいな。こうして相川君と一緒にいられるなんて」
「俺も。山岸さんと恋人になったんだなってしみじみ感じてるところ」
「ふふ……私も相川君と同じこと思ってた」
手をつなぎながらゆっくり歩く。
「あのさ、これからは下の名前で呼び合わない? 会社以外では」
「あ、そうだね。ちょっと照れるけど」
穂高の提案に、千尋はもちろんうなずいた。
「千尋……全然違和感ないな」
「本当に? じゃあ……穂高」
千尋はドキドキしてしまう。
「すごい幸せ」
「私も。ずっとこうしていたいな」
もっと両想いになった幸せに浸っていたい。ただそう思っただけだけれど、穂高は違う意味に受け取ったようだ。
「それなら今夜は一緒に過ごそう」
「え?」
「千尋を帰したくない」
今までがなんだったのかと思うほど情熱的になった穂高が、千尋の腰を抱き寄せる。
至近距離で見つめられて、千尋の心臓はこれ以上ないほど高鳴った。
「嫌?」
甘い声でささやかれたら嫌だなんて言えない。
「……嫌じゃない」
千尋は穂高の胸に顔をうずめた。
初めての夜だからと穂高が選んだラグジュアリーホテルの一室で、千尋は穂高に組み敷かれていた。
「千尋」
穂高が切なげに目を細めて千尋の名を呼ぶ。
「そうやって呼ばれるのうれしい」
啓人から呼ばれたときとは違う。それは穂高の優しさと愛情を感じるからだろうか。
「俺はこの気持ちを隠さなくていいのがうれしい」
「……うん。私も」
早すぎる心変わりを打ち明けることにためらいを持っていたけれど、素直になった今、千尋はこの上ない幸せを感じている。
「穂高が言ってくれたからだよね」
「もう黙っていられなかった」
大切そうに頬を撫(な)でられて千尋は微笑む。
「誰にも千尋を渡さない」
言葉とともに唇を深く塞がれる。
千尋の思考はたちまち溶けていき、彼への想いだけに占められる。
口内の奥深くまでつながって求め合う。
深いキスを交わすのと同時に、穂高が千尋の体に優しく手を這わしていく。
「俺がこんなことを言うのは意外? でも本心だから」
「本心……」
「俺、山岸さんが好きなんだ。初めは辻浦さんを見返すために、協力するだけのつもりだったけど、いつの間にか惚れてた」
「う、嘘?」
自分は幻聴でも聞いているのだろうか。うれしいことのはずなのに信じられなくて現実味が湧かない。
「嘘じゃない。以前、山岸さんのいいところを話しただろ? あれは全部本音」
「ほ、本当に?」
恐る恐る確認する千尋に穂高がうなずく。それはうっとりするほど美しい表情だった。
「ほんと。山岸さんが好きだよ。辻浦さんに嫉妬するくらい」
「す! 好きって……」
かあっと頬に熱が集まる。信じられないけれど、穂高は真剣に言ってくれた。
(相川君が私を好き?)
そんなことは考えたことがなかった。穂高にとって自分はそういう対象ではないと思っていたから。
(私たちは辻浦君に復讐するための関係だから)
でも今、千尋を見つめる穂高は本当の気持ちを言ってくれているように見える。
喜びが胸の中を満たしていく。それはだんだんと現実味を帯びていき、抑えられない想いがあふれる。
「私も……私も相川君が好き」
その言葉は穂高にとって予想外だったのか、彼の目が見開かれる。
「避けてたのは気持ちがばれそうで不安だったから。元カレにやり返そうとしてるのに、ほかに好きな人ができたなんて駄目なんじゃないかと思って……」
千尋の言葉が終わると沈黙が訪れる。
それから数秒後、穂高が満面の笑みになった。
「ありがとう」
「うん、私もありがとう」
千尋も晴れやかな笑顔になる。
心の中は幸せでいっぱいだ。
穂高が、千尋をまっすぐ見つめる。
「好きだよ」
「わ、私も……す、好きです……」
クールでドライだと思っていた穂高の言葉に、頬が熱くなる。
「あの、うれしいけど恥ずかしくて」
千尋の心臓は、さっきからずっとドキドキしっぱなしだ。
「俺も同じだよ。でも言葉にしないと伝わらないだろ?」
そう言う穂高は、よくみるとちょっと照れ臭そうだった。
食事の後はふたりで夜の通りを歩き大きな公園に寄った。
暗い時間でも危なくないように、あちこちに明かりがついた公園は、千尋たちのようなカップルが何組もいた。
親しそうに腕を組んで歩く様子を見ていると、千尋も穂高と手をつなぎたい気持ちにかられた。
そんな気持ちが穂高に伝わったのか、彼の大きな手がそっと千尋の手を包み込んだ。
目が合うとお互いうれしくて微笑み合う。
「……なんだかうれしいな。こうして相川君と一緒にいられるなんて」
「俺も。山岸さんと恋人になったんだなってしみじみ感じてるところ」
「ふふ……私も相川君と同じこと思ってた」
手をつなぎながらゆっくり歩く。
「あのさ、これからは下の名前で呼び合わない? 会社以外では」
「あ、そうだね。ちょっと照れるけど」
穂高の提案に、千尋はもちろんうなずいた。
「千尋……全然違和感ないな」
「本当に? じゃあ……穂高」
千尋はドキドキしてしまう。
「すごい幸せ」
「私も。ずっとこうしていたいな」
もっと両想いになった幸せに浸っていたい。ただそう思っただけだけれど、穂高は違う意味に受け取ったようだ。
「それなら今夜は一緒に過ごそう」
「え?」
「千尋を帰したくない」
今までがなんだったのかと思うほど情熱的になった穂高が、千尋の腰を抱き寄せる。
至近距離で見つめられて、千尋の心臓はこれ以上ないほど高鳴った。
「嫌?」
甘い声でささやかれたら嫌だなんて言えない。
「……嫌じゃない」
千尋は穂高の胸に顔をうずめた。
初めての夜だからと穂高が選んだラグジュアリーホテルの一室で、千尋は穂高に組み敷かれていた。
「千尋」
穂高が切なげに目を細めて千尋の名を呼ぶ。
「そうやって呼ばれるのうれしい」
啓人から呼ばれたときとは違う。それは穂高の優しさと愛情を感じるからだろうか。
「俺はこの気持ちを隠さなくていいのがうれしい」
「……うん。私も」
早すぎる心変わりを打ち明けることにためらいを持っていたけれど、素直になった今、千尋はこの上ない幸せを感じている。
「穂高が言ってくれたからだよね」
「もう黙っていられなかった」
大切そうに頬を撫(な)でられて千尋は微笑む。
「誰にも千尋を渡さない」
言葉とともに唇を深く塞がれる。
千尋の思考はたちまち溶けていき、彼への想いだけに占められる。
口内の奥深くまでつながって求め合う。
深いキスを交わすのと同時に、穂高が千尋の体に優しく手を這わしていく。