失恋したので復讐します
長く塞がれていた唇が解放されて、千尋がはあと熱っぽい息を吐いたとき、ワンピースはベッドの下に落ち、あられもない下着姿になっていた。
素肌をさらしている状況は恥ずかしくてどうにかなりそうだが、隠すことも許されない。
それどころか穂高は器用に千尋のブラを外してショーツも足から抜いてしまう。
生まれたままの姿をさらし、千尋はぎゅっと目を閉じた。
「千尋、かわいい」
穂高が愛おしそうに千尋の肌を撫でる。体の奥底からこみ上げる感覚に、千尋はぎゅっと目をつむったのだった。
それからは幸せな日々が続いた。バレンタインデーは千尋の手作りチョコをプレゼントし、喜んだ穂高がホワイトデーはまだ先なのにかわいいアクセサリーをプレゼントしてくれた。
千尋が幸せになったことで、啓人への復讐はもう意味をなさなくなっていたが、自分を磨くのは怠らずに続けていた。
穂高にかわいいと思ってほしいし、同僚の助けになりたい。なにより自分自身が楽しいと感じている。
仕事に関してはあれこれ悩みながらも、ミスをしないように丁寧にこなしている。
幅広い視点で見るようになってから気づきが多く、積極的に周囲のフォローをしているうちに、これまでとは違った仕事を頼まれるようになった。
「山岸さんが模型作製できるなんて知らなかった。手伝ってもらっていい?」
「はい、大丈夫ですよ」
「CADは使えるんだっけ?」
「ひと通りは」
「それなら打ち合わせに一緒に参加してもらおうかな」
ここ最近ますます仕事は増えているけど、やりがいがあって楽しい。いつの間にか自分が会話の中心にいることも多く、戸惑うものの充実している。
二月下旬になると社内コンペ用の作品が形になり、明日エントリーするというところまでこぎつけた。
「へーこれがコンペ用の作品なんだ。すごくいいよ」
文美に見せると、かなり高い評価をもらえた。
「構造計算が合ってるか確認してもらっていいですか?」
「任せて」
彼女には穂高と付き合い始めたことも報告してあるから、なにかと協力してくれている。
啓人の出方を警戒して、できるだけ作品を会社に持ち込みたくないため、締め切りぎりぎりに頼むことになったけれど、快く対応してくれている。
「一カ所直すだけでいいと思う」
「ありがとうございます」
「文美、本当にありがとう」
「どういたしまして、これで完璧だね」
作品のファイルを鍵がかかるファイルフォルダに格納してから、三人で退社した。
翌日出社すると、ファイルフォルダ内のデータが消えていた。
「えっ、嘘?」