悪役令嬢、藤堂椿による華麗にて波乱なる純情政略結婚の心得
第三話 皇愁夜
椿モノ:こうして俺達は……
付き合うことになった。(便宜上な!)
個人的な交際には
法的なものは関わってこないから、
気分は楽だ。
このあとヒロインの高山葉月が現れても、
俺が身を引けば済む話だからな。
※愁夜、唐突に椿に手のひらを差し出す。
愁夜「はい!」
椿「何?」
愁夜「スマホを寄こせ。
プライベート用のやつな」
椿「なんで?」
愁夜「僕の番号を登録する」
椿「えっ? なんで?」
愁夜「付き合っているからだろ!」
※愁夜、ちょっとキレ気味。
椿「いつも通り用事のあるときは、
藤堂の屋敷のほうに
かけていただければ……」
※椿、めっちゃ引き気味に、
やんわりと断ろうとする。
愁夜「昭和かよ。
って執事の篠原さんが出るだろう?
毎回決まって。
よし、わかった。
僕専用のを持たせる」
椿「えっ? いらねぇし!」
愁夜「放課後までには用意するから。
逃げるなよ」
椿「あはははは……」
※椿、笑いながら引きつっている。
◇◇◇視点が愁夜に移行◇◇◇
※愁夜、廊下で椿と別れて、
自分の教室に入っていく椿を
切なげに目で追う。
※教室に入ると、
わっとクラスメイトに囲まれる椿。
女子だけでなく、
男子とも気さくに軽口を言い合って笑っている。
愁夜モノ:彼女は男女ともに人気がある。
この学園にありがちな気位の高い
よくある感じの令嬢とはちょっと違う。
※教室の隅で本を読んでいる地味な女の子を
からかった男子に向かって、
拳を振り上げて追いかける椿を見て、
クスリと笑みを漏らす愁夜。
愁夜モノ:ああ、またやってる。
※椿、例の男子を前に洋扇子をはらりと開いて、
ばっちりと悪役令嬢ポーズを決めると、
例の男子が土下座をして椿に詫びる。
愁夜モノ:自らヒールを演じながら、
ああやって弱きを助け、強きをくじく。
変わらないなぁ。
口は悪いけど温かくって、
見た目の割に正義漢で、
間違っていると思うことには決して屈しない。
初めて会ったときからそうだ。
そういう彼女の凛とした強さを
僕は心から愛おしいと思う。
※愁夜、くすくすと笑うが、
ピタッと真顔になる。
まあもっとも、
彼女はただのお人好しなので、
本物のヒールとして、
後で僕があの男を
きちんとシメておこうと思う。
牽制の意味も兼ねて。
◇◇◇そして放課後◇◇◇
※椿、前後左右を確認の上、
抜き足差し足でロッカールームにダッシュするが、
すかさず皇家の執事に捕まる。
皇家執事「藤堂さま、こちらを」
※皇家執事、
椿に一輪の白薔薇を差し出す。
椿「えっ? なにこれ?」
皇家執事「愁夜さまからの呼び出しです」
※椿、驚愕の表情を浮かべる。
椿「えっ? あいつ白薔薇を鞄に入れて
登校してんのか?
つうかどんな男子高校生?」
※背後に愁夜が立ち、軽く椿の頭を叩く。
椿「痛てっ!」
愁夜「あほっ! 僕の執務室に生けてあるものだ。
妙な想像をするな!
学生会の資料の準備に
少し時間がかかりそうなので、
ちょっと待っててって
そう伝えようとしたんだけど」
椿「じゃあ、俺、帰るわ。
邪魔したら悪いし」
※椿、そそくさとその場を立ち去ろうとするが、
愁夜にむんずと襟首を掴まれる。
愁夜「帰るな! すぐに終わるから、
ちょっとだけ待ってて」
※椿、愁夜の執務室に連行される。
椿「あ〜れ〜!」
◇◇◇愁夜専属執務室◇◇◇
※愁夜、パソコンで資料を作成中。
椿、虚ろな表情で
客用のソファーに座っている。
皇家執事「藤堂様、愁夜様専用スマホの
ご用意ができております」
※そういって皇家の執事が、
椿にスマホを差し出す。
※椿、虚ろな瞳でそれを受け取る。
椿「あっ、俺、これ知ってる。
お前んとこの会社の役員に配布されてる
『パワハラ専用機』だ」
愁夜「失礼なことを言うな!
うちはホワイトだ」
※愁夜、パソコンで作業を続けながら。
椿「絶対に着信拒否できない仕様だとか、
遠隔でしか電源が落とせないとか、
色々聞くぞ?
何が何でも着信に出ないと、
エライことになるらしいな」
愁夜「妙な憶測をするな!
ただのスマホだよ。
情報漏洩が怖いから、
ちょっとセキュリティーが特別仕様なだけの」
椿「うわ〜、やっぱりパワハラ専用機じゃねぇか!」
※プチッという擬音語とともに
愁夜のこめかみに怒りの青筋が立つ。
愁夜「ああそう、
電話がそんなに嫌だというのなら、構わないよ。
今すぐ婚約の効力を発生させて、
速攻で皇家に行儀見習いに入ってもらうから!」
※愁夜、懐から紙切れを取り出して、
ヒラヒラする。
椿「さーせんでしたっ!」
※椿、速攻で三つ指をついて詫びる。
愁夜「分かれば……よろしい」
※愁夜、少し赤面する。
愁夜モノ:これが僕のわがままだということは
重々承知している。
それでも……今、このとき、
もう少しだけ君と一緒にいたいのだと、
僕は狂おしいほどに思ってしまう。
※椿の腹が鳴る。
椿「す〜め〜ら〜ぎ〜、腹減った〜!
この俺様を待たせるからにはなぁ」
※椿、恨みがましい眼差しで愁夜を睨む。
椿「帰りにハンバーガー奢れ〜!」
※椿、軽く泣きの入った声を上げる。
愁夜「別に……いいけど」
※愁夜、赤面し、ちょっとニヤけそうになる。
付き合うことになった。(便宜上な!)
個人的な交際には
法的なものは関わってこないから、
気分は楽だ。
このあとヒロインの高山葉月が現れても、
俺が身を引けば済む話だからな。
※愁夜、唐突に椿に手のひらを差し出す。
愁夜「はい!」
椿「何?」
愁夜「スマホを寄こせ。
プライベート用のやつな」
椿「なんで?」
愁夜「僕の番号を登録する」
椿「えっ? なんで?」
愁夜「付き合っているからだろ!」
※愁夜、ちょっとキレ気味。
椿「いつも通り用事のあるときは、
藤堂の屋敷のほうに
かけていただければ……」
※椿、めっちゃ引き気味に、
やんわりと断ろうとする。
愁夜「昭和かよ。
って執事の篠原さんが出るだろう?
毎回決まって。
よし、わかった。
僕専用のを持たせる」
椿「えっ? いらねぇし!」
愁夜「放課後までには用意するから。
逃げるなよ」
椿「あはははは……」
※椿、笑いながら引きつっている。
◇◇◇視点が愁夜に移行◇◇◇
※愁夜、廊下で椿と別れて、
自分の教室に入っていく椿を
切なげに目で追う。
※教室に入ると、
わっとクラスメイトに囲まれる椿。
女子だけでなく、
男子とも気さくに軽口を言い合って笑っている。
愁夜モノ:彼女は男女ともに人気がある。
この学園にありがちな気位の高い
よくある感じの令嬢とはちょっと違う。
※教室の隅で本を読んでいる地味な女の子を
からかった男子に向かって、
拳を振り上げて追いかける椿を見て、
クスリと笑みを漏らす愁夜。
愁夜モノ:ああ、またやってる。
※椿、例の男子を前に洋扇子をはらりと開いて、
ばっちりと悪役令嬢ポーズを決めると、
例の男子が土下座をして椿に詫びる。
愁夜モノ:自らヒールを演じながら、
ああやって弱きを助け、強きをくじく。
変わらないなぁ。
口は悪いけど温かくって、
見た目の割に正義漢で、
間違っていると思うことには決して屈しない。
初めて会ったときからそうだ。
そういう彼女の凛とした強さを
僕は心から愛おしいと思う。
※愁夜、くすくすと笑うが、
ピタッと真顔になる。
まあもっとも、
彼女はただのお人好しなので、
本物のヒールとして、
後で僕があの男を
きちんとシメておこうと思う。
牽制の意味も兼ねて。
◇◇◇そして放課後◇◇◇
※椿、前後左右を確認の上、
抜き足差し足でロッカールームにダッシュするが、
すかさず皇家の執事に捕まる。
皇家執事「藤堂さま、こちらを」
※皇家執事、
椿に一輪の白薔薇を差し出す。
椿「えっ? なにこれ?」
皇家執事「愁夜さまからの呼び出しです」
※椿、驚愕の表情を浮かべる。
椿「えっ? あいつ白薔薇を鞄に入れて
登校してんのか?
つうかどんな男子高校生?」
※背後に愁夜が立ち、軽く椿の頭を叩く。
椿「痛てっ!」
愁夜「あほっ! 僕の執務室に生けてあるものだ。
妙な想像をするな!
学生会の資料の準備に
少し時間がかかりそうなので、
ちょっと待っててって
そう伝えようとしたんだけど」
椿「じゃあ、俺、帰るわ。
邪魔したら悪いし」
※椿、そそくさとその場を立ち去ろうとするが、
愁夜にむんずと襟首を掴まれる。
愁夜「帰るな! すぐに終わるから、
ちょっとだけ待ってて」
※椿、愁夜の執務室に連行される。
椿「あ〜れ〜!」
◇◇◇愁夜専属執務室◇◇◇
※愁夜、パソコンで資料を作成中。
椿、虚ろな表情で
客用のソファーに座っている。
皇家執事「藤堂様、愁夜様専用スマホの
ご用意ができております」
※そういって皇家の執事が、
椿にスマホを差し出す。
※椿、虚ろな瞳でそれを受け取る。
椿「あっ、俺、これ知ってる。
お前んとこの会社の役員に配布されてる
『パワハラ専用機』だ」
愁夜「失礼なことを言うな!
うちはホワイトだ」
※愁夜、パソコンで作業を続けながら。
椿「絶対に着信拒否できない仕様だとか、
遠隔でしか電源が落とせないとか、
色々聞くぞ?
何が何でも着信に出ないと、
エライことになるらしいな」
愁夜「妙な憶測をするな!
ただのスマホだよ。
情報漏洩が怖いから、
ちょっとセキュリティーが特別仕様なだけの」
椿「うわ〜、やっぱりパワハラ専用機じゃねぇか!」
※プチッという擬音語とともに
愁夜のこめかみに怒りの青筋が立つ。
愁夜「ああそう、
電話がそんなに嫌だというのなら、構わないよ。
今すぐ婚約の効力を発生させて、
速攻で皇家に行儀見習いに入ってもらうから!」
※愁夜、懐から紙切れを取り出して、
ヒラヒラする。
椿「さーせんでしたっ!」
※椿、速攻で三つ指をついて詫びる。
愁夜「分かれば……よろしい」
※愁夜、少し赤面する。
愁夜モノ:これが僕のわがままだということは
重々承知している。
それでも……今、このとき、
もう少しだけ君と一緒にいたいのだと、
僕は狂おしいほどに思ってしまう。
※椿の腹が鳴る。
椿「す〜め〜ら〜ぎ〜、腹減った〜!
この俺様を待たせるからにはなぁ」
※椿、恨みがましい眼差しで愁夜を睨む。
椿「帰りにハンバーガー奢れ〜!」
※椿、軽く泣きの入った声を上げる。
愁夜「別に……いいけど」
※愁夜、赤面し、ちょっとニヤけそうになる。