宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「そうか……本気で独り身のままでいるらしくてな。親としては心配しているんだが」
「いずれエラ様のお考えが変わることもございましょう」
「だがなぁ、そろそろ相手を見つけないと、()き遅れて誰にも相手にされなくなるだろう?」

 エラは今年で二十歳になるらしい。貴族令嬢としては確かに大概の者が嫁いでいる年齢と言えた。

「しかし、王妃殿下は二十五で王家へと嫁がれておりますし、それほど焦ることもないのでは?」

 イジドーラ王妃の影響か、近頃は貴族女性の晩婚化が容認されつつある。

「それはそうなんだが。まぁ、いざとなったら君に貰ってもらうとするか。何、娘は働き者だ。お墨付きで差し出せるぞ」
「わたしなどを選ばなくとも、エラ様なら引く手あまたでございますよ。ご令嬢であるうちに良縁に恵まれることもございましょう。どうぞエラ様のために良きご縁談をお選びください」
「つれないな。うちの娘では不満か?」
「わたしにとってエラ様は高値の花のような存在ですから。ですが、そうですね……もしエラ様が貴族籍をお抜けになったら、その時は遠慮なくいかせていただきます」
「君も貴族のしがらみを重視するか。まぁそれも致し方ない」

 エデラー男爵の言葉に、マテアスは社交辞令のような笑みを返した。

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