宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
◇
「ヴァルト様、先ほどはありがとうございました。どれも大切に使わせていただきますわ」
「ああ」
「あ……雨が」
贈り物を選んだ後、引き続きサロンでジークヴァルトとお茶を楽しんでいた。先ほどまで晴れ渡っていた空が、一気に陰って滝のような雨を降らせている。
ジークヴァルトの腕を離れて、サロンの大きなガラス戸から貼りつくように外を眺めた。しかし土砂降りの雨は見る見るうちに細くなり、嘘のように再び空に青が広がった。
「ヴァルト様、見てくださいませ! 虹が……!」
見上げる空に、虹が美しい弧を描いた。うっすら見えていた半円は、次第に色を濃くしていく。空に残る雲間から始まり、大地へとのびるその様は、まるで天と地をつなぐ架け橋のようだ。
「綺麗……」
「ああ、そうだな」
感嘆まじりのため息をついていると、ガラス戸についていた手の上に、大きな手が重ねられた。閉じ込めるように、後ろからジークヴァルトが体を囲ってくる。
(不意打ちはやめてほしいのにっ)
途端に鼓動が跳ね上がり、リーゼロッテはヤモリのごとく窓にへばりついた。もはや虹を見上げる余裕もない。掴まれた手と、すれすれの背中の体温ばかりに意識が集中してしまう。
(この体勢は、ど、どうしたらいいの……?)
手汗でガラスが曇りそうな勢いだ。壁ドン変法のような押さえ技に、動揺して何も考えられない。
「リーゼロッテ」
呼ばれるままに顔を上げた。覆いかぶさってくるジークヴァルトの視線は、自分の唇にあるようだ。リーゼロッテはかっと頬を赤らめた。
「ヴァルト様、先ほどはありがとうございました。どれも大切に使わせていただきますわ」
「ああ」
「あ……雨が」
贈り物を選んだ後、引き続きサロンでジークヴァルトとお茶を楽しんでいた。先ほどまで晴れ渡っていた空が、一気に陰って滝のような雨を降らせている。
ジークヴァルトの腕を離れて、サロンの大きなガラス戸から貼りつくように外を眺めた。しかし土砂降りの雨は見る見るうちに細くなり、嘘のように再び空に青が広がった。
「ヴァルト様、見てくださいませ! 虹が……!」
見上げる空に、虹が美しい弧を描いた。うっすら見えていた半円は、次第に色を濃くしていく。空に残る雲間から始まり、大地へとのびるその様は、まるで天と地をつなぐ架け橋のようだ。
「綺麗……」
「ああ、そうだな」
感嘆まじりのため息をついていると、ガラス戸についていた手の上に、大きな手が重ねられた。閉じ込めるように、後ろからジークヴァルトが体を囲ってくる。
(不意打ちはやめてほしいのにっ)
途端に鼓動が跳ね上がり、リーゼロッテはヤモリのごとく窓にへばりついた。もはや虹を見上げる余裕もない。掴まれた手と、すれすれの背中の体温ばかりに意識が集中してしまう。
(この体勢は、ど、どうしたらいいの……?)
手汗でガラスが曇りそうな勢いだ。壁ドン変法のような押さえ技に、動揺して何も考えられない。
「リーゼロッテ」
呼ばれるままに顔を上げた。覆いかぶさってくるジークヴァルトの視線は、自分の唇にあるようだ。リーゼロッテはかっと頬を赤らめた。