宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 エラはとぼとぼと王城の廊下を歩いていた。ロミルダとは別行動で、以前世話になった者たちを探し回った。だが話ができたのは下働きの人間ばかりで、女官には誰ひとりとして会えず仕舞(じま)いだ。

(やっぱり男爵令嬢の立場じゃうまくいかないわね……)

 あの時は公爵の婚約者であるリーゼロッテがいたからこその待遇だったのだ。そのことを痛感して、こんなことなら書庫にこもって勉強を続けていればよかったと、エラは大きく肩を落とした。

「あれ? エラ嬢、王城(ここ)にいるなんて珍しいね」
「デルプフェルト様、ご無沙汰しております」

 突然カイに呼び止められて、エラは慌てて礼を取った。不思議顔のカイに、王城に来た理由とともに準女官試験を受けるつもりであることを話す。

「ああ、そっか。リーゼロッテ嬢は今クリスティーナ様のところにいるんだっけ」
「はい……お嬢様のためになんとしても試験に合格しないとならないのです」
「準女官の資格ならベッティが持ってるけど……」
「ベッティが!?」

 言われてみればベッティは王妃の離宮にある星読みの間で、アンネマリーやリーゼロッテの世話をしていた。そんな身近な知り合いに有資格者がいたことに、エラは瞳を輝かせた。
 しかし彼女は今、ブルーメ子爵家でルチアの侍女をしている。私情で今すぐ呼び出すなどできないだろう。

 カイは少し考えるそぶりをしてから、何かを思いついたのか、少々人の悪い笑みを浮かべた。

「ねぇ、エラ嬢。推薦状って誰が書くの?」
「公爵様とダーミッシュ伯爵様が書いてくださることに」

 準女官試験は貴族の推薦状がないと受けられない。父は男爵だが、推薦するには弱すぎる立場なので、今回は除外した。

「それにデルプフェルト家も加わるからさ、その代わりオレの頼みも聞いてくれない?」

 推薦の数は多ければ多いほど良いとされている。その分、信頼置ける者だという保証になるからだ。デルプフェルト侯爵家は王家に近いということもあり、その効果は絶大だ。
 カイの提案に驚きつつも、崖っぷちのエラはふたつ返事で了承した。

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