宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
『ねぇ、ヴァルト~、もう我慢するのやめようよ~』

 執務室を出た廊下を歩きながら、守護者(ジークハルト)がうるさくからんでくる。自分の歩に合わせて背泳ぎしながら、同じスピードでついてきていた。それを無視して進んでいると、なおも食い下がるように言いつのってくる。

『そうやって毎日ムラムラして悶々(もんもん)とされると、オレもつらいんだってば。いいじゃん、もうリーゼロッテとは両思いなんだしさぁ、今夜にでもがっつり抱いちゃおうよ~』
「ふざけるな」

 眉間にしわを刻んで短く答える。無視するつもりだったのに、つい言葉を返してしまった。

『別にふざけてないって。リーゼロッテも嫌がったりしないと思うよ? 大丈夫だから気にせずやっちゃいなよ』
明日(あす)は夜会だ」
『夜会は夕方からだし、時間的に十分でしょ?』
「それくらいで終われる訳ないだろう」
『はっ、絶倫』

 それ以上は無視して進む。ジークハルトはニコニコ顔で、今度は横泳ぎしながらついてくる。

『だったらさ、ずっとふたりで寝室に(こも)ってればいいよ。夜会なんて、これからいくらでも行けるんだし。そうしなってば、ねぇ、ヴァルト~』
「うるさい、黙れ」

 無視するつもりがまた答えてしまった。苛立ちと共に歩が早くなる。

『じゃあ、いいこと教えてあげる。(つい)の託宣を受けた者は一度でも体をつなげると、お互いの存在を感じ取れるようになるんだ。ヴァルトはオレをいつでもそばに感じてるでしょ? それと同じでリーゼロッテが今元気にしてるかとか、離れてても分かるようになるからさ~』
「駄目だ。ダーミッシュ伯爵との誓約(せいやく)がある」
『すぐに婚姻手続きを済ませれば、それで万事(ばんじ)解決でしょ? それからは毎日一緒に眠れるんだよ? 離れるのはちょっとの間じゃない。どうしてここで二の足()むのかな~』

 ぱっと体を起こすと、ジークハルトはポンと手を打った。

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