宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 手を引かれダンスフロアへとエスコートされる。ジークヴァルトは長身でよく目立つ。多くの貴族がなだれ込んだフロアで、優先的に中央付近に通された。
 見つめ合い、最初のポジションを取る。そっと腰に回された大きな手にドキドキしてしまう。
 ジークヴァルトは自分のパートナーだ。この(ひと)だけがいればいい。本当にこれからずっと共に歩んでいける。そう思うと満たされすぎて、胸から何かがあふれだしそうだ。

 軽快なワルツと共にステップを踏むと、スカートの(すそ)があとを追うようにふわりと舞った。今日のドレスはホルターネックの、少し大人びた深い青のドレスだ。

 今朝になって急にエラが、昨日決めたものとは違うドレスにしようと言ってきた。眠っている間に虫に刺されて、首筋の自分では見えない所が赤く()れているらしかった。この寒い国で蚊に刺されるなど初めてのことだったので、ちょっと意外に思ったリーゼロッテだ。

(よく見たら胸元もいっぱい刺されていたし……確かにキスマークなんかと勘違いされたら恥ずかしい場所よね)

 幸いかゆくはないが、そんな口に出せないことを思ったのはエラにも内緒だ。

 曲も中盤にさしかかり、ジークヴァルトとの息もぴったりだ。最近は異形の者に意識を取られることもなく、余裕で踊ることができるようになった。力の制御もうまくなったものだと、我ながら感心してしまう。

「――……っ!」

 そんなことを思った矢先に、横に踊る紳士に悲鳴を上げそうになった。貞子(さだこ)紳士(しんし)だ。去年の白の夜会で見た、黒髪の女を肩にだれんと引っかけたあの紳士だ。

「大丈夫だ、問題ない」
「ですがあの方、昨年も……」

 一年前と同じように黒髪をひと(ふさ)口にくわえ、異形の女は愛おしそうに紳士の顔を()でさすっている。ダンスを踊る紳士はそれに気づいていない。もしかしたらずっとあんなふうに、日常を()かれた状態で過ごしているのかもしれない。

「あれは異形ではない。生霊(いきりょう)だ」
「い、生霊!?」

 そっけなく言われて目を見張った。
(余計に(たち)が悪そうな気がするんですけど……!)

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