宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
(何気にわたしも社交界慣れしてきた感じね)

 いずれ公爵夫人となって、フーゲンベルクを切り盛りしていかなくてはならない。そんな大役をこなせるか不安だが、ジークヴァルトのパートナーとして横に並び立てることが誇らしかった。

 クラーラたちと別れ、控えの休憩室に向かう。人目を気にしなくてよい場所に来て、ほっと息をついた。

「疲れたか?」
「少しだけ。でもちょっと休めば大丈夫ですわ」

 できればまだ夜会の雰囲気を楽しんでいたかった。あわよくば後でまたジークヴァルトとダンスがしたいと思っていたリーゼロッテだ。

「あーん」
 ソファに座るなり目の前に差し出される。夜会では駄目だと言ったのに、思わず唇を尖らせた。

「なんだ? 誰も見ていないぞ?」

 遠慮するなとばかりに唇に押しつけられた。それにしても小腹が()いたことが、なぜ分かったのだろうか。今差し出されているのは、菓子ではなくひと口大のオードブルだ。
 口をつけてしまった以上、もう食べるしかない。仕方なくぱくりとくわえたら、勢いでジークヴァルトの指先まで食べてしまった。その瞬間、びくっとジークヴァルトが手を引っ込めた。なんだか傷つくリアクションだ。

「んん?」
 口の中を広がった香草の風味に、小さく首をかしげた。食べ慣れないその香りは、なのにどこか懐かしい。

紫蘇(しそ)とバジルとパクチーを足して三で割ったような味がするわ)

「また酒か……!?」
 珍しく動揺した声音のジークヴァルトが、同じものを自分の口に放り込んだ。確かめるように噛み砕いたかと思ったら、瞬時に微妙な顔になる。

(あ、コレ、駄目な人の表情だわ)

 この鼻に抜ける感じの香りは、確かに人によって好き嫌いが分かれそうだ。リーゼロッテ的にはクセになる味に思えたが、ジークヴァルトは苦手な部類なのだろう。

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