宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
(ったく、こんなことならベッティを呼び戻すんだった)
ウルリーケの死を機に、グレーデン家の不正を一気に暴く。その密命のためにカイは動いていた。ご夫人たちの噂話は馬鹿にはできない。情報収集で白の夜会に潜り込んだが、侍女として入り込めるベッティがいないため、カイ自らが令嬢姿で暗躍していた。
普段なら遊び慣れた夫人を誘惑して、閨の快楽と共に情報を引き出しているカイだったが、グレーデン家にやたらと嫌われている身としては、今回ばかりはその手も使えない。
かちゃりと鍵が回った感触に、カイは素早く部屋へと入り込んだ。中にいたリーゼロッテと目が合って、出そうな悲鳴に口をふさぐ。
「しっ、黙って!」
すぐさま扉の鍵を掛ける。廊下の気配を伺うと、騎士が近づいてくるのが分かった。ひとつひとつの部屋をノックして回っている。やがてこの部屋の扉も叩かれた。
「フーゲンベルク公爵様、おくつろぎのところ失礼いたします」
リーゼロッテに視線を落とすと、大丈夫だと言うふうに頷いてきた。居留守を使うより問題ないことを伝えてもらった方が、カイとしても面倒事を回避できる。押さえていた手を離すとリーゼロッテが扉に向けて声をかけた。
「今、ジークヴァルト様は席を外されております。何か御用でしょうか?」
「わたしは近衛騎士で、ただ今警護の巡回をしております。不躾に申し訳ないのですが、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「わたくしはリーゼロッテ・ダーミッシュです」
「公爵様のご婚約者様でいらっしゃいましたか。これは大変失礼いたしました。それで念のために確認なのですが、何か異常はなかったでしょうか? 例えば誰かが訪ねてきたりだとか……」
「いえ、特にどなたもいらしてませんわ」
リーゼロッテはそつなく受け答えしていく。令嬢姿のカイが潜入捜査をしていることを、きちんと理解したのだろう。
(リーゼロッテ嬢って本当におもしろいよな)
暢気にそんなことを考えながらも、気配を消すことは忘れない。
ウルリーケの死を機に、グレーデン家の不正を一気に暴く。その密命のためにカイは動いていた。ご夫人たちの噂話は馬鹿にはできない。情報収集で白の夜会に潜り込んだが、侍女として入り込めるベッティがいないため、カイ自らが令嬢姿で暗躍していた。
普段なら遊び慣れた夫人を誘惑して、閨の快楽と共に情報を引き出しているカイだったが、グレーデン家にやたらと嫌われている身としては、今回ばかりはその手も使えない。
かちゃりと鍵が回った感触に、カイは素早く部屋へと入り込んだ。中にいたリーゼロッテと目が合って、出そうな悲鳴に口をふさぐ。
「しっ、黙って!」
すぐさま扉の鍵を掛ける。廊下の気配を伺うと、騎士が近づいてくるのが分かった。ひとつひとつの部屋をノックして回っている。やがてこの部屋の扉も叩かれた。
「フーゲンベルク公爵様、おくつろぎのところ失礼いたします」
リーゼロッテに視線を落とすと、大丈夫だと言うふうに頷いてきた。居留守を使うより問題ないことを伝えてもらった方が、カイとしても面倒事を回避できる。押さえていた手を離すとリーゼロッテが扉に向けて声をかけた。
「今、ジークヴァルト様は席を外されております。何か御用でしょうか?」
「わたしは近衛騎士で、ただ今警護の巡回をしております。不躾に申し訳ないのですが、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「わたくしはリーゼロッテ・ダーミッシュです」
「公爵様のご婚約者様でいらっしゃいましたか。これは大変失礼いたしました。それで念のために確認なのですが、何か異常はなかったでしょうか? 例えば誰かが訪ねてきたりだとか……」
「いえ、特にどなたもいらしてませんわ」
リーゼロッテはそつなく受け答えしていく。令嬢姿のカイが潜入捜査をしていることを、きちんと理解したのだろう。
(リーゼロッテ嬢って本当におもしろいよな)
暢気にそんなことを考えながらも、気配を消すことは忘れない。