宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「……イグナーツ様は博愛主義で、自分の理想を追い求める、諦めない心をお持ちの方だよ?」

 なぜかカイは疑問形で締めくくった。自分で言っていて、これは誰だ? とおかしくなってしまったからだ。まあ、要は来るものは拒まず、狙った獲物は必ず手に入れる男、そういうことだ。

 リーゼロッテはどのように解釈したかは知らないが、「そうなのですね」と頬をほころばせた。(けが)れを知らないその笑顔に、(がら)にもなくちょっぴり罪悪感を憶えてしまったカイだった。

「で、リーゼロッテ嬢はここで何をやってたの?」

 せっかくの夜会でリーゼロッテをほったらかしにするなど、実にジークヴァルトらしくない。何か不測の事態があったとしか思えなかった。

「ジークヴァルト様がキュプカー侯爵様に呼ばれて……わたくしは留守番をしておりました」
「そっか。それじゃオレも早めに退散しようかな」

 大したことはなさそうだと結論づけた。このままここにいたら、本当に八つ裂きにされかねない。密室で託宣の相手が誰かと(こも)っているなど、龍付きの男にとっては許し難いことだ。

「ん? これは知恵の輪?」
「はい、()いた時間に暇をつぶそうと……」

 テーブルの上の知恵の輪を拾い上げ、カイはまったく無駄のない動きでそれをあっさりふたつに分けた。

「でもこれって暇つぶしにもならないね」
「そんな……カイ様まで……」

 涙目になったリーゼロッテの前で、再びするっと重ね合わせる。つながった輪をぷらぷらさせながら、カイはそれをリーゼロッテに手渡した。

「これフーゲンブルクの鉄製だね。よくできてる」
「フーゲンベルクの? そういえば鉄鉱石が採れるとか……」
「うん、ほら、ココよく見るとロゴが彫ってあるでしょ?」

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