宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 白の夜会が終わり、年末まではしばらく大きな公務もない予定だ。その分ハインリヒは、たまった書類仕事を精力的に片づけていた。
 長い冬はもっぱらこの作業が続く。雪にうずもれるこの国では、視察や式典は暖かい時期にのみ行われるのが常だった。

(それにしても年々寒さが増してきているようだな……)

 冬の備蓄は秋の収穫によって賄われるが、収穫量はその年の天候に大きく左右される。天災などがおきても備蓄が尽きないように、常に国民が冬を(しの)げる程度の食料・物資を蓄えることを、王家は昔から行っている。それが近年、雪解け前に切り崩されることが多くなった。

「建国当初は冬は短かったと聞く……」
「何の話だ?」

 漏れた独り言にジークヴァルトが怪訝(けげん)そうに返してきた。リーゼロッテが再び東宮へと行ってしまい、このところはずっと不機嫌顔だ。

「いや、近年の冬の寒さが気になってな」
「そうか」

 ブラオエルシュタイン国は建国して八百年以上経つ。昔は今よりももっと暖かい気候だったらしい。

「王太子殿下、神殿の者が迎えに来ております」
「ああ……もうそんな時間か」

 近衛騎士の声掛けに、切り替えるように息を吐く。これから神官長と祈りの間で、瞑想を行う予定だ。

「ジークヴァルト、後は任せる」
「仰せのままに、王太子殿下」

 人目があるときにのみ、ジークヴァルトは臣下の礼を取る。この使い分けは子供のころから変わらない。

 王太子用の執務室を後にして、ハインリヒは祈りの間へと急ぎ向かった。

< 149 / 391 >

この作品をシェア

pagetop