宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
「ね、話した通りだったでしょう?」
「はい、あんなに大きな声で鳴かれると、本当にびっくりいたしますね」

 東宮のリーゼロッテの部屋で、エラはテラスの外を見やった。白の夜会も終わり、季節はもう冬へと移ろおうとしている。東宮は王都より高い山あいにあるため、ちらつく雪の回数も多いように感じられた。

「ここはなんだかさびしい場所ですね。こんなところでお嬢様が、おひとりで過ごされていたのかと思うと……」
「今はこうして一緒にいてくれているわ。わたくしのためにありがとう、エラ」

 無事に準女官試験に合格したエラは、リーゼロッテの後を追って東宮へとすぐさま向かった。試験は思うほど難しくなく、常識的な設問ばかりで拍子抜けしたほどだ。女官長との面接はさすがに緊張したが、なんとか試験を切り抜けたエラだった。

「あの……お茶が入りました」
 おずおずと会話に入ってきた赤毛の令嬢が、ティーカップを差し出してくる。

「ありがとうございます、ルチア様」

 笑みを返し、エラとともにひと口含んだ。ふたりして微妙な顔になる。

「どうですか……?」
「ルチア様はもう少しお勉強なさった方がよろしいですね」
「ごめんなさい、わたしこういうのほんと苦手で……」
「でもわたくしが()れるよりずっと美味しいですわ。どうしても渋くなってしまうから、上手に淹れるコツが知りたいと思って」
「お嬢様は覚える必要はございません」

 エラにきっぱりと言われ、リーゼロッテは少し残念そうに微笑んだ。

「いつもやってもらってばかりで申し訳ないわ」
「お嬢様は公爵夫人となられる方です。身の回りのお世話はわたしにお任せください」
「そうね、いつもありがとう、エラ」

 もうひと口紅茶を含むと、ルチアが抱えていたお盆を胸にぎゅっと抱きしめた。

「あの、無理に飲まなくても」
「いいえ、せっかくルチア様が淹れてくださったんですもの」
「ルチア様もおかけになって、どうぞお召し上がりください。ご自分の進歩を自らお確かめになるのも、勉強のうちのひとつです」
「エラはずいぶんと厳しい先生ね」
「こういったことは初めが肝心です。一度身についてしまうと、直すことが難しくなりますから」

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