宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
「やっといなくなったと思ったのに……」
「リーゼロッテ様のことですか?」

 つい漏れ出た言葉を、アルベルトに聞かれてしまった。ヘッダはしまったという顔をして、なんとか取り(つくろ)う言葉を探そうとした。

「今回はあちらから侍女を連れてきたそうではないですか。ヘッダ様のご負担が軽くなって何よりです」
「……それはそうなのですが」

 これ見よがしにふたりも侍女を連れてきたことも、嫌味のようでおもしろくない。王女にすら自分ひとりしかついていないのにだ。

「それはさておき、お加減はいかがですか? この冬も寒さが増しそうですので、おつらいときは遠慮せずおっしゃってくださいね」
「いえ、最近はずいぶんと調子もいいですので」
「クリスティーナ様も気にかけていらっしゃいます。先日のようにお倒れになる前に、きちんと自己申告なさいますよう、わたしからもお願い申し上げておきます」

 王女を(たて)に取られては素直に頷くしかない。ヘッダは子供のころから持病があり、発作を起こすことがよくあった。生まれた当初から成人まで生きられないと、医師に言われてきたこの身だ。

 そんな自分が王女の役に立てるのだと思うと、それが何より誇らしい。クリスティーナはヘッダのすべてだ。クリスティーナがいるから生きながらえている。それは誇張などではなく、ヘッダにとっては事実以外の何ものでもなかった。

「……あんな女、今すぐ死んでしまえばいいのに」
「ヘッダ様、滅多なことをおっしゃるものではありません」

 (たしな)められるように言われ、ヘッダはアルベルトを睨み上げた。

貴方(あなた)はどうしてそう冷静でいられるのですか……! あの女に一体どんな価値があると言うのです! クリスティーナ様より尊い存在などと、わたくしは絶対に認めませんわ!」

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