宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「分かるときが間もなく来るわ。宿世(すくせ)とは逆らえぬ深き(ごう)。どの道を辿ろうとも行く先はただひとつ……」

 そのタイミングで再び扉が叩かれた。

「あなたはもういいわ。リーゼロッテの元にお戻りなさい」
「では御前失礼させていただきます」

 エラが部屋を辞し、入れ替わりのようにアルベルトが現れた。先ほども思ったが、彼らしくない硬い表情を浮かべている。

「クリスティーナ様、こちらは……ブルーメ子爵令嬢でございます」
「あ、あのっ、ルチア・ブルーメでござい、ますっ。お召しにより、参上いたしまし、たっ」

 息も絶え絶えに礼を取った赤毛の令嬢に、クリスティーナは息を飲んだ。その瞬間、目の前が光の(うず)に包まれる。

(――夢見の力が)

 いつも前触れなく訪れる光に、クリスティーナはただ身をまかせるしかない。押し寄せる映像(ビジョン)が洪水のごとく頭を満たして、身が消えゆくような浮遊感を覚えた。

「クリスティーナ様……!」

 アルベルトに支えられていることに気づき、はっと意識を取り戻した。どんなに長い夢見を視ようとも、周囲の人間にしてみれば一瞬すら経ってはいない。

「大丈夫よ、アルベルト」

 その腕から離れると、クリスティーナは目の前にいるルチアをじっと見つめた。鮮やかな赤毛に金色の瞳。色彩だけでなくその顔立ちは、父王ディートリヒや妹姫のピッパと恐ろしいほどよく似ていた。

 (まぎ)れもなく王族の血を引く少女。龍が課した運命を、クリスティーナは夢見の中に垣間視た。

「もういいわ……お下がりなさい」
「仰せのままに」

< 162 / 391 >

この作品をシェア

pagetop