宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
◇
いつもより早い時間に戻ってきたハインリヒに驚きつつも、アンネマリーは笑顔で迎え入れた。
久しぶりに人目を気にせず抱きしめ合う。公務中に顔を合わせることはあっても、分刻みで進められるスケジュールに、ふたりきりの時間は皆無と言っていい。
加えてハインリヒの政務が忙しく、ここ最近は夜も遅くなる日々が続いていた。横で眠っていた形跡はあるものの、目覚めた時、寝台の中は常にもぬけの殻だ。
昼間も気になっていた顔色の悪さが増しているように思えて、アンネマリーは不安げにハインリヒの頬を両手で包み込んだ。
「ここのところ忙しすぎるのではないのですか? もっとお体を休めないと……」
ハインリヒが手を抜けない性格なのは、アンネマリーにも十分すぎるほど分かっている。だがさすがに近頃は詰め込みすぎだ。そのことを口にしようとするも、無言のままでいるハインリヒに、性急に唇を塞がれた。
うなじを支える指に、髪の奥に隠された龍のあざをなぞられる。途端に体が熱を帯び、アンネマリーから力が抜けた。広い居間の中途半端な場所で、立ったまま口づけは続けられる。
角度を変えて口づけを深めながら、ハインリヒの手は背を滑り落ちていく。
「あっ、ハインリ……」
その熱に翻弄されながらも、いつになく強引な唇にアンネマリーは戸惑った。忙しさの中、確かにここしばらくはゆっくり話もできてない。そんなときは今まで何度もあったが、こんなにも余裕のないハインリヒは見たことがなかった。
どんなときも常に感じていた気遣いが、今夜のハインリヒからは伝わってこない。すがりつくように落とされる口づけを、アンネマリーはただ受け入れることしかできなかった。
それでも与えられる刺激に抗えない熱が高まって、アンネマリーはいつの間にかその意識を手放した。
いつもより早い時間に戻ってきたハインリヒに驚きつつも、アンネマリーは笑顔で迎え入れた。
久しぶりに人目を気にせず抱きしめ合う。公務中に顔を合わせることはあっても、分刻みで進められるスケジュールに、ふたりきりの時間は皆無と言っていい。
加えてハインリヒの政務が忙しく、ここ最近は夜も遅くなる日々が続いていた。横で眠っていた形跡はあるものの、目覚めた時、寝台の中は常にもぬけの殻だ。
昼間も気になっていた顔色の悪さが増しているように思えて、アンネマリーは不安げにハインリヒの頬を両手で包み込んだ。
「ここのところ忙しすぎるのではないのですか? もっとお体を休めないと……」
ハインリヒが手を抜けない性格なのは、アンネマリーにも十分すぎるほど分かっている。だがさすがに近頃は詰め込みすぎだ。そのことを口にしようとするも、無言のままでいるハインリヒに、性急に唇を塞がれた。
うなじを支える指に、髪の奥に隠された龍のあざをなぞられる。途端に体が熱を帯び、アンネマリーから力が抜けた。広い居間の中途半端な場所で、立ったまま口づけは続けられる。
角度を変えて口づけを深めながら、ハインリヒの手は背を滑り落ちていく。
「あっ、ハインリ……」
その熱に翻弄されながらも、いつになく強引な唇にアンネマリーは戸惑った。忙しさの中、確かにここしばらくはゆっくり話もできてない。そんなときは今まで何度もあったが、こんなにも余裕のないハインリヒは見たことがなかった。
どんなときも常に感じていた気遣いが、今夜のハインリヒからは伝わってこない。すがりつくように落とされる口づけを、アンネマリーはただ受け入れることしかできなかった。
それでも与えられる刺激に抗えない熱が高まって、アンネマリーはいつの間にかその意識を手放した。