宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
頭から湯をかぶりながら、苛立つように息を吐く。急激にどうしようもない焦燥感に見舞われた。愛するひとすら笑顔にできない自分は、いつまでたっても不甲斐ないままだ。
(明日はまた瞑想の日か……)
そのことを思い出すと、再び気が重くなってくる。だが自分は一国の王太子らしくあらねばならない。泣き言ばかりでは、そのうちアンネマリーに愛想をつかされそうだ。
「甘えるな……いい加減、自覚を持て」
乱暴に髪を洗いながら、言い聞かせるようにつぶやいた。
湯から上がると寝台でアンネマリーが待っていた。マッサージの続きをしたいと言ってくる。
「ここに横になって?」
はにかんだ顔で言われ、促されるままうつぶせる。やさしく背を滑る手の心地よさに、思わず寝入りそうになった。
「ありがとう、もう十分だよ」
「いいからハインリヒはおとなしくしてて」
真剣な声音に、ハインリヒは言われるまま口をつぐんだ。首筋から背骨、肩甲骨と円を描くように滑っていく指先が脇腹にさしかかったとき、ハインリヒはくすぐったくて身をよじらせた。
「動いたら駄目」
「いや、そう言われても……」
それでもアンネマリーの動きは止まらない。前かがみになって指圧を続けるものだから、背中に押し付けられる柔らかさが気になって仕方がない。
「アンネマリー、その、そろそろ大丈夫だから……」
「もう少しだけ……」
「……だったらお返しに君にもやってあげよう」
「え? あっ駄目、ハインリヒ」
アンネマリーを抱きしめ、あちらこちらを指圧する、押しているようでアンネマリーのやわらかい場所ばかりを重点的になぞっていった。
「駄目だったら。わたくしがハインリヒを……」
「押しているだけだよ」
言葉とは裏腹に、気分がどんどん盛り上がってくる。夕べの反省も忘れ、ハインリヒはアンネマリーを存分に味わった。
(明日はまた瞑想の日か……)
そのことを思い出すと、再び気が重くなってくる。だが自分は一国の王太子らしくあらねばならない。泣き言ばかりでは、そのうちアンネマリーに愛想をつかされそうだ。
「甘えるな……いい加減、自覚を持て」
乱暴に髪を洗いながら、言い聞かせるようにつぶやいた。
湯から上がると寝台でアンネマリーが待っていた。マッサージの続きをしたいと言ってくる。
「ここに横になって?」
はにかんだ顔で言われ、促されるままうつぶせる。やさしく背を滑る手の心地よさに、思わず寝入りそうになった。
「ありがとう、もう十分だよ」
「いいからハインリヒはおとなしくしてて」
真剣な声音に、ハインリヒは言われるまま口をつぐんだ。首筋から背骨、肩甲骨と円を描くように滑っていく指先が脇腹にさしかかったとき、ハインリヒはくすぐったくて身をよじらせた。
「動いたら駄目」
「いや、そう言われても……」
それでもアンネマリーの動きは止まらない。前かがみになって指圧を続けるものだから、背中に押し付けられる柔らかさが気になって仕方がない。
「アンネマリー、その、そろそろ大丈夫だから……」
「もう少しだけ……」
「……だったらお返しに君にもやってあげよう」
「え? あっ駄目、ハインリヒ」
アンネマリーを抱きしめ、あちらこちらを指圧する、押しているようでアンネマリーのやわらかい場所ばかりを重点的になぞっていった。
「駄目だったら。わたくしがハインリヒを……」
「押しているだけだよ」
言葉とは裏腹に、気分がどんどん盛り上がってくる。夕べの反省も忘れ、ハインリヒはアンネマリーを存分に味わった。