宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
王位を継ぐ託宣を受けた者に、守護者は代々受け継がれていく。新しい託宣者が命を結んだ今、守護者はハインリヒからその子供に移ったと言えた。それはアンネマリー以外の女性に触れたとしても、守護者が牙を剥くことはないということだ。
「なんのお話ですか、ハインリヒお兄様?」
事情を知らないピッパが、不思議そうにハインリヒに手を伸ばしてくる。その指先が触れる寸前に、ハインリヒは条件反射のように距離を取った。長年染みついた恐怖が、どうしても万が一を想像させてしまう。
「ハインリヒ」
イジドーラに名を呼ばれ、ハインリヒは強張った顔を上げた。感慨深そうに目を細め、イジドーラはためらいもなくハインリヒを抱きしめた。
「この腕にもう一度貴方を抱ける日を、心待ちにしていたわ」
「義母上……」
ハインリヒの体から力が抜けていく。震えながら、その手はイジドーラの背に回された。
――守護者の呪縛から解き放たれた
もう二度と、あの悲劇を繰り返すことはない。そのことを実感した瞬間だった。
「わあ、本当によかったですね! これでどんな女性も触りたい放題ですよ。ほら、ハインリヒ様、いつも気になる女官を目で追ってたし、これからは遠慮せずどんどん触っちゃってください」
その横でカイが朗らかに言う。感動の場面が一気に台無しとなり、心なしかアンネマリーの視線が冷たくなった。
「ば、馬鹿を言うな、カイ」
「馬鹿も何も、昔からハインリヒ様、胸の大きな女官が好きだったじゃないですか」
「なっ!? そんなことあるわけないだろう」
「そうね。ハインリヒが赤子の頃は、誰よりもジルケに懐いていたわね」
「義母上まで……! ち、違うんだ、アンネマリー」
「なんのお話ですか、ハインリヒお兄様?」
事情を知らないピッパが、不思議そうにハインリヒに手を伸ばしてくる。その指先が触れる寸前に、ハインリヒは条件反射のように距離を取った。長年染みついた恐怖が、どうしても万が一を想像させてしまう。
「ハインリヒ」
イジドーラに名を呼ばれ、ハインリヒは強張った顔を上げた。感慨深そうに目を細め、イジドーラはためらいもなくハインリヒを抱きしめた。
「この腕にもう一度貴方を抱ける日を、心待ちにしていたわ」
「義母上……」
ハインリヒの体から力が抜けていく。震えながら、その手はイジドーラの背に回された。
――守護者の呪縛から解き放たれた
もう二度と、あの悲劇を繰り返すことはない。そのことを実感した瞬間だった。
「わあ、本当によかったですね! これでどんな女性も触りたい放題ですよ。ほら、ハインリヒ様、いつも気になる女官を目で追ってたし、これからは遠慮せずどんどん触っちゃってください」
その横でカイが朗らかに言う。感動の場面が一気に台無しとなり、心なしかアンネマリーの視線が冷たくなった。
「ば、馬鹿を言うな、カイ」
「馬鹿も何も、昔からハインリヒ様、胸の大きな女官が好きだったじゃないですか」
「なっ!? そんなことあるわけないだろう」
「そうね。ハインリヒが赤子の頃は、誰よりもジルケに懐いていたわね」
「義母上まで……! ち、違うんだ、アンネマリー」