宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
無限とも思われる時の中、ハインリヒはふいに何かに腕を掴まれた。永遠の輪から一気に離脱する。一瞬の出来事に混乱しか起こらない。
気づくと冷たい床に手をついて、そこに映る自分の顔を見つめていた。上がった息を必死に整え、視界に入った足先の人物を、上へとゆっくり辿っていく。
「父上……」
横に立つディートリヒを、放心したように見上げた。辺りに視線を巡らせると、何もない空間に、手をついている床がどこまでも広がっている。
「すべてを目にしてきたか? ハインリヒよ」
「はい……見て、きました」
はじまりの出来事。この国が作られた理由。そして、自分が担うべき役割も。
「我がブラオエルシュタイン家が受け継ぎしは、この国の記憶――」
「国の、記憶」
「王位継承とは記憶の継承に他ならない。王だなんだと祀り上げられようと、我らに決定権など与えられてはおらぬ。ただ従い見守るだけだ」
「すべては龍の思し召し……」
「そうだ。だがその龍の意思すらも、星読みの希みひとつ」
静かに言って、ディートリヒは前方へと視線を向けた。そこには青銀色に揺らめく扉が高くそびえたっている。
「行くがよい。あの先に龍がいる」
操られるようにハインリヒは立ち上がった。導かれるまま扉の前へと歩を進める。
「恐れるな、次代の王よ。真実はすべてそこにある」
ディートリヒの声に背を押され、ハインリヒは扉を押し開いた。開かれた先、青銀の光にその姿が飲まれ消えていく。
それを見届けたディートリヒは、静寂の中、ひとり遠い瞳でつぶやいた。
「これで余も、ようやく楽になる――」
気づくと冷たい床に手をついて、そこに映る自分の顔を見つめていた。上がった息を必死に整え、視界に入った足先の人物を、上へとゆっくり辿っていく。
「父上……」
横に立つディートリヒを、放心したように見上げた。辺りに視線を巡らせると、何もない空間に、手をついている床がどこまでも広がっている。
「すべてを目にしてきたか? ハインリヒよ」
「はい……見て、きました」
はじまりの出来事。この国が作られた理由。そして、自分が担うべき役割も。
「我がブラオエルシュタイン家が受け継ぎしは、この国の記憶――」
「国の、記憶」
「王位継承とは記憶の継承に他ならない。王だなんだと祀り上げられようと、我らに決定権など与えられてはおらぬ。ただ従い見守るだけだ」
「すべては龍の思し召し……」
「そうだ。だがその龍の意思すらも、星読みの希みひとつ」
静かに言って、ディートリヒは前方へと視線を向けた。そこには青銀色に揺らめく扉が高くそびえたっている。
「行くがよい。あの先に龍がいる」
操られるようにハインリヒは立ち上がった。導かれるまま扉の前へと歩を進める。
「恐れるな、次代の王よ。真実はすべてそこにある」
ディートリヒの声に背を押され、ハインリヒは扉を押し開いた。開かれた先、青銀の光にその姿が飲まれ消えていく。
それを見届けたディートリヒは、静寂の中、ひとり遠い瞳でつぶやいた。
「これで余も、ようやく楽になる――」