宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
◇
光を抜け、ハインリヒはその場に降り立った。水晶のような鉱石が、むき出しの岩から無数に覗いている。
凍てつくような重圧を全身に受け、ハインリヒは気づけば片膝を地につけていた。
地面は滑らかだが、まるで氷でできているかのようだ。深く透き通るそこに自身の姿を映しながら、ハインリヒは息苦しさの中、懸命に息を吐き出した。
――来たか、新しき王よ
直接、頭に響いた声は、地響きを思わせるほど脳を震わせる。冷気を感じた全身が総毛立ち、ハインリヒはその圧に抗いながら、ようやくの思いで顔を上げた。
目の前に巨大な龍がいる。
面長の顔は草食獣のようでいて、青銀の瞳は鋭く冷たい。頭には鹿に似た角があり、長い髯髭が左右に伸びる。小さめの耳はピンと横に立ち、虎のごとき足先には鷹を思わせる鋭利な爪が覗いていた。首筋より下、腹、尾にかけては大蛇の様相で、その背に並ぶ青銀の鱗から幻想的な光が放たれる。
ハインリヒは言葉を失った。国の紋章に刻まれた見慣れた龍が、現実に形取られて、確かに今そこに存在している。
大きく裂けた口からは鋭い牙が覗き、間を置いてゆっくりと深く冷気が放たれる。それが龍の呼吸なのだと気づいた時、鉤爪の手の内に、何かが握りこまれているのが目に入った。
(リーゼロッテ嬢……!?)
龍の爪の間で、リーゼロッテが人形のようにもたれかかっていた。蜂蜜色の髪が指の隙間から流れ、眠るようにその身を預けている。
緑に発光する力が体から溢れ出て、絶え間なく龍の鱗に吸い込まれては溶け込んでいく。
はっと息を飲み、喉がごくりと鳴った。
(違う、あれは――マルグリット・ラウエンシュタイン)
「龍の花嫁……」
言葉だけだったその知識が、実態として目の前にある。花嫁とは龍の灯。ラウエンシュタインの力を欠いては、龍は命を繋げない。無意識に浮かんだ考えが、知らぬはずの真実を告げてきた。
光を抜け、ハインリヒはその場に降り立った。水晶のような鉱石が、むき出しの岩から無数に覗いている。
凍てつくような重圧を全身に受け、ハインリヒは気づけば片膝を地につけていた。
地面は滑らかだが、まるで氷でできているかのようだ。深く透き通るそこに自身の姿を映しながら、ハインリヒは息苦しさの中、懸命に息を吐き出した。
――来たか、新しき王よ
直接、頭に響いた声は、地響きを思わせるほど脳を震わせる。冷気を感じた全身が総毛立ち、ハインリヒはその圧に抗いながら、ようやくの思いで顔を上げた。
目の前に巨大な龍がいる。
面長の顔は草食獣のようでいて、青銀の瞳は鋭く冷たい。頭には鹿に似た角があり、長い髯髭が左右に伸びる。小さめの耳はピンと横に立ち、虎のごとき足先には鷹を思わせる鋭利な爪が覗いていた。首筋より下、腹、尾にかけては大蛇の様相で、その背に並ぶ青銀の鱗から幻想的な光が放たれる。
ハインリヒは言葉を失った。国の紋章に刻まれた見慣れた龍が、現実に形取られて、確かに今そこに存在している。
大きく裂けた口からは鋭い牙が覗き、間を置いてゆっくりと深く冷気が放たれる。それが龍の呼吸なのだと気づいた時、鉤爪の手の内に、何かが握りこまれているのが目に入った。
(リーゼロッテ嬢……!?)
龍の爪の間で、リーゼロッテが人形のようにもたれかかっていた。蜂蜜色の髪が指の隙間から流れ、眠るようにその身を預けている。
緑に発光する力が体から溢れ出て、絶え間なく龍の鱗に吸い込まれては溶け込んでいく。
はっと息を飲み、喉がごくりと鳴った。
(違う、あれは――マルグリット・ラウエンシュタイン)
「龍の花嫁……」
言葉だけだったその知識が、実態として目の前にある。花嫁とは龍の灯。ラウエンシュタインの力を欠いては、龍は命を繋げない。無意識に浮かんだ考えが、知らぬはずの真実を告げてきた。