宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
「リーゼロッテ様、今回は以前より上質な守り石をご用意させていただきました」
「まあ! こんなにたくさん」
「力を籠めるのも、随分とお上手になられましたからね。今のリーゼロッテ様なら、石を割らずに練習できることでしょう」

 公爵家の呪いで壊滅状態だった執務室は、すっかり元通りになっていた。いつもの風景に戻り、リーゼロッテの力の制御の訓練も再開されることとなった。
 ジークヴァルトは眉間にしわを寄せつつ、自分の執務机で仕事に精を出している。最近あまりにも自制がきかないジークヴァルトに、マテアスは「目の前の餌(リーゼロッテ)はお預けの刑」に処しているところだ。

 執務室がはちゃめちゃになっても、日常の業務をすべて停止するわけにいくはずもない。荒れ狂った部屋の中から優先事項を選別し、修復も最短で行う。この多大な労力を考えると、(あるじ)へのこの仕置きは至極妥当と言えるだろう。

 だがあまり締め付けすぎると、限界突破した時に(あるじ)の奇行が激しくなる。(あめ)(むち)(さじ)加減を模索している今日この頃だ。

「間もなくエラ様がいらっしゃいます。本日からリーゼロッテ様の訓練に、応援として参加していただくことになりました」

 今までの経緯を考えると、ジークヴァルトの暴走をマテアスひとりで見張ることは困難だ。そこで最強にして最高の壁、エラの登場である。これを機に、エラには公爵家の呪いが起こる理由を説明してある。リーゼロッテの横にエラを座らせておけば、ジークヴァルトの破壊行動も最低限に抑えられることだろう。

「エラが来るの? だったら守り石に力を籠めるところを見てもらいたいわ」
「でしたらもうしばらくお待ちいただけますか?」

 リーゼロッテはうれしそうに頷いた。

「本でも持ってくればよかったかしら?」
「それでしたらお暇つぶしにこちらなどいかがでしょう」

 マテアスが上着の内ポケットに手を入れて、ごそごそと探っていく。薄い手帳に予備の眼鏡、何かのメモ書き、鍵の束、黒い小箱と次から次へと物を取り出した。

「ああ、ありました」
 かちゃりと音を鳴らし最後に出てきたのは、複雑な曲線が絡み合う金属だった。

「これは、知恵の輪?」
「さすがリーゼロッテ様、ご存じでしたか。こちらはこのようにふたつのパーツに分かれておりますので、こんなふうにして外して遊びます。子供のおもちゃでございますが、時間つぶしにはなるでしょう」

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