宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 その日の朝はひとりきりで目覚めた。エラはお使いで東宮を離れているため、今日は自分で身支度を整えなくてはならない。

 マンボウの雄叫(おたけ)びをBGMにストレッチを始める。早寝早起きの生活は健康的で、すこぶる体が軽く快調な毎日だ。ここでの階段生活に、足腰も随分(きた)えられていた。

 体を右に左にひねっては、満足げに姿見(すがたみ)に全身を映す。伸びた背筋にくびれた腰、そして何よりも盛り上がる胸の曲線の美しさ。

(自分史上最高のプロポーションだわ)

 Cカップにはまだまだ及ばないが、これならBカップは間違いなしだ。山もくびれも皆無(かいむ)だったこれまでの寸胴(ずんどう)体型を思うと、目を見張るほどの成長ぶりだ。

(バストアップに励んできた甲斐があったわ)

 暇を持て余す毎日は、気づけば肉体改造集中合宿となっていた。脇の脂肪を必死の形相(ぎょうそう)で胸にかき集め、大胸筋(だいきょうきん)を鍛えるために、合掌(がっしょう)のポーズにダンベル運動、腕立て伏せも欠かすことなく頑張った。

 汗水流して筋トレに励むなど、およそ深窓(しんそう)の令嬢のやることではない。人目もはばからず集中できたのも、結果を出すのに役立った。

(この勢いならCカップも夢じゃないかも)

 両手で胸をすくい上げ真ん中に寄せてみると、そこには立派な谷間ができあがる。

(今なら女の色気でヴァルト様をメロメロにできるんじゃ……)

 腰に手を当て髪をかき上げながら、リーゼロッテはあはんとポーズをとった。鏡の向こうで口を半開きにした自分が、ばちりとウィンクを返してくる。

 数秒そのまま動かずにいたが、我に返った途端、むちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
 こんなアホな格好をしたとしても、ジークヴァルトの眉間にしわが寄るだけだ。ひとり顔を赤らめて、そそくさとリーゼロッテは着替えを済ませた。

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