宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
ここのところ神殿内で、家畜や獣の死骸が放置される事件が多発している。その現場は凄惨なもので、見せつけるように切り刻まれたものがばら撒かれているらしい。
あることないこと噂が飛び交って、神殿内は疑心暗鬼な雰囲気が漂っていた。その現場に遭遇したことはないが、確かにそのことも気が沈む原因ではあった。
最近朝に目覚めると、身に覚えなく手足が土で汚れていることが何度もあった。そのことは誰にも言えないでいる。時に衣類にべっとりと血のりがついていることも。
両親を亡くしてから、時折記憶が飛ぶようになった。それは大概、血を見た直後に起こる。ミヒャエルのことがあってから、その症状がさらに悪化していた。
「……マルコさんはご両親を痛ましい事故で亡くされたのでしたね。無神経な物言いをしました。申し訳ありません」
「い、いいえ! ボクの両親が死んだのは、レミュリオ様のせいではありませんから!」
「そう言っていただけるとわたしも気が楽になります。マルコさんはおやさしい方ですね」
「そんなことは……」
慈しむように言われて、マルコの中で自責の念が膨れ上がる。両親が死んだのはクマに襲われたからだ。そしてそうなると知っていたのに、それを止められなかったマルコのせいだ。
「……やはり体調がよろしくなさそうですね。休ませて差し上げたいのは山々なのですが、今日は第一王女による大事な神事があります。もう少しだけ頑張っていただけますか?」
「はい、ご心配には及びません。……でも、ボクはいても何もお役に立ってないですよ?」
マルコはいつも神事には関わってはいない。終わるまで控えの部屋で待っているだけだ。
「マルコさん、あなたには夢見の力があります。第一王女と同じ、類い稀なる力が」
レミュリオは立ち止まり、閉じた瞳のままマルコを見下ろした。その端正な顔を見上げながら、マルコも長い廊下の途中で立ち止まる。
「見習いから正式に神官となったら、あなたもすぐ神事に出ることになるでしょう。そのためにも場の波動に少しでも触れておいてください」
「波動とかって言われても、ボクにはよく分からないし……」
「分からなくてもいいのですよ。あなたには夢見の力がある」
レミュリオの言葉に、マルコは拳をきつく握りしめた。
あることないこと噂が飛び交って、神殿内は疑心暗鬼な雰囲気が漂っていた。その現場に遭遇したことはないが、確かにそのことも気が沈む原因ではあった。
最近朝に目覚めると、身に覚えなく手足が土で汚れていることが何度もあった。そのことは誰にも言えないでいる。時に衣類にべっとりと血のりがついていることも。
両親を亡くしてから、時折記憶が飛ぶようになった。それは大概、血を見た直後に起こる。ミヒャエルのことがあってから、その症状がさらに悪化していた。
「……マルコさんはご両親を痛ましい事故で亡くされたのでしたね。無神経な物言いをしました。申し訳ありません」
「い、いいえ! ボクの両親が死んだのは、レミュリオ様のせいではありませんから!」
「そう言っていただけるとわたしも気が楽になります。マルコさんはおやさしい方ですね」
「そんなことは……」
慈しむように言われて、マルコの中で自責の念が膨れ上がる。両親が死んだのはクマに襲われたからだ。そしてそうなると知っていたのに、それを止められなかったマルコのせいだ。
「……やはり体調がよろしくなさそうですね。休ませて差し上げたいのは山々なのですが、今日は第一王女による大事な神事があります。もう少しだけ頑張っていただけますか?」
「はい、ご心配には及びません。……でも、ボクはいても何もお役に立ってないですよ?」
マルコはいつも神事には関わってはいない。終わるまで控えの部屋で待っているだけだ。
「マルコさん、あなたには夢見の力があります。第一王女と同じ、類い稀なる力が」
レミュリオは立ち止まり、閉じた瞳のままマルコを見下ろした。その端正な顔を見上げながら、マルコも長い廊下の途中で立ち止まる。
「見習いから正式に神官となったら、あなたもすぐ神事に出ることになるでしょう。そのためにも場の波動に少しでも触れておいてください」
「波動とかって言われても、ボクにはよく分からないし……」
「分からなくてもいいのですよ。あなたには夢見の力がある」
レミュリオの言葉に、マルコは拳をきつく握りしめた。